第14話 僕と二人組
町の喧騒を眺めがら歩く、目的地は決まってるし
そんなに迷わないハズだ
目的を達成したら、さっさと帰ればいいだけだしな
リントさんが出ていくのを見届けて、椅子に座ってじっとしてたり、ベッドに寝転がっていた僕でしたが、退屈過ぎて我慢の限界が来てしまい、自室の窓から飛び降りて、全速力で逃げ出した
記念すべき?初の脱走である
「帰ったら
お説教が待ってるんだろうなー」
それでもする事なかったし、部屋から出るとリントさんが無言で睨んでくるわ
戻っても、本なんか無いから一人ファッションショーでもやってみようかと思ったけど
それは、流石にやめた
めんどくさいから
「おっと、着いた
すみません、クレープください」
「はいよ、トッピングはどうします?」
「チョコレートソースと生クリームで」
「かしこまりました、少しお待ちください」
昔から甘いものは、家族の影響で好きだったけど
なんか、恥ずかしくてこっそりと食べてた
今なら、問題ない…なんで、こっそり食べてたんだっけ?
んー、なんでだっけ?
まあ、いいや。
「はい、お待ちどうさま」
「…あ、はい、これ」
「はい、ちょうどですね
ありがとうございました!」
クレープを受けとり、代金を払い前に来た時に座ってたベンチに向かい座る
一口食べる、うん、甘い。もう一口
やっぱり甘いものは、美味しい
モグモグ
「隣、いいですか?」
「?」
モグモグ?
なんか、影が?
見上げてみると、黒い髪に黒い瞳で人当たりのよさそうな顔の男性が立っていた
緑のシャツに青いズボンという格好で
僕は、こくこくと首を縦に振って座ってる場所を少しずれて座る場所をあける
男性は、「ありがとう」と言って腰掛けた
なんか、変な人だ
見た限り、町の人ではないみたいだけど
武器の類いは見当たらない、馬車で来たとか?
いや、町の人をよく知らないけど
「…町の人、ですか?」
「いえ、違います
この町には友人の用事で来ました
僕は友人についてきただけですから、観光です」
観光、か
そっか、やっぱり町の人ではなかった
クレープを食べ終えた、美味しかった
「青いエプロンドレス、確か不思議の国のアリス?」
「はえっ!?」
今、なんて言った?
聞き間違えでなければ
「…あの、今、なんて?」
「不思議の国のアリスです
ご存知ですか?」
「あー…いえ、知らないです」
「すみません、忘れてください」
ペコリと頭を軽く下げた後に、申し訳なさそうな顔をされた
不思議の国のアリスと言った?
それは、童話だっけ?確か
この人、なに?
あやしい、ジーっと顔を見つめる
相手は、困ったようにあはは、と笑う
「あらあら、また人が返答に困るような事を言ったの?」
女性の声、声の方を向く
そこには、今の僕と同じくらいの背格好の女の子がいた
肩まである銀髪の一房は三つ編みになっていて、やや垂れ目がちな同じく銀の瞳、口許には笑みを浮かべていて、どこか現実離れした印象をうけた
着ている服は、白い着物のようだけど水色の帯、袖や裾にはフリルが付いていた、どこかのお姫様と言った感じだった
靴は普通にパンプスだし
…この世界の和服なんだろうな、きっと
「彼女の服装を見て、つい口から出ただけだ」
「へぇ、なるほど
ごめんね、私の友人が失礼な事を言って」
「あ、いえ
いいんですよ、びっくりしただけですから」
「そっか、ならいいかな
自己紹介するわ、私は九条優希
今年で18になるわ
こっちはピーナッツスキー、20歳のピーナッツさん
あ、敬語はなしでいいわ」
えっ、ピーナッツスキー?
変な名前だ、って流石にないか
敬語はなしか、相手がそれで良いなら良いか
「誰がピーナッツスキーだっ!!
俺には、ハルト・バークマンという名前がある」
「…えっと、僕はシア・ポインセチアです」
自分も名乗っておくけど、九条優希に、ハルト・バークマン
って日本名?
あれ?でも彼女、銀髪だ?
どこか日本人離れした容姿だけど
「そっか、シアね
よろしく」
「え、うん」
「…目的は済ましたのか?」
「ふふ、もちろん」
「なら、帰るのか」
「そうね、とりあえず
滞在するわ」
その言葉に眉をしかめるハルトが、なぜ?と尋ねる
目的が済んだのに残る理由があるのかと僕も気になる
というか、どこから来たんだろ?
「あの人に会ってないから、かしら?」
「マーカスさんか」
二人は、あの人の知り合い?
「…えっと、旅団に用なの?」
僕の言葉に、二人して僕を見てくる
いや、そんなに注目しないでなんか照れるから
「シアは『月宵草の輩』のメンバーなの?」
「うん、入ってまだ日が浅いけど」
「そうか、ユウキ
目的を早めに済ますか?」
「仕方ないな~、ハルト君は
シア、案内を頼めるかしら?」
「うん、わかった
ところで、二人はどこから来たの?」
気になったので尋ねてみる、優希は僕の鼻を人指し指で軽く突いてきた
「王都から、六日間も歩いて来たわ
職業は秘密、オッケー?」
「う、うん」
王都から?秘密だっていわれても気になる
尋ねても、はぐらかされそうだ
そんな僕を見て、歩いて行く優希
「行こうか、案内と言っても場所は知ってる」
「そうなんだ
「ああ、彼女は、元はその旅団のメンバーだったからな」
えっ!?そうなの?
あ、リントさんが言ってた突然抜けた人、ってまさか凛の事?
鼻歌交じりに先に歩く凛を見る
「なんで、抜けたの?」
「さあな、知らない
1年前に気づいたら王都にいて、俺と同じ職場にいた
しかも、上司として
ああ、アイツに聞いてもはぐらかされるだけだ」
「そうなんだ、あ、ところで、さっき僕に聞いてきたのって?」
「…アレか、ユウキから聞かされた物語の主人公と君の服装が一致してたので、違うと承知で聞いただけだ
まあ、案の定違ったがな」
じゃあ、優希は僕と同じ世界にいたのか?
わからない
うーん、って着いた
「変わらないなー、ここは」
「シアっ!!」
びくっ、うわ
リントさんが怒ってる、やっぱり怒ってるよ
「君は、起きてすぐにどこかに出ていくな
一週間も寝込んでたんだぞ!!まだ本調子かどうかも怪しいのに
いいか、今後はバカな真似はよせ」
「あ、あはは、ごめんなさい」
しゅんとなる、そうだけど、退屈…くう、アッチが正論だし言い返せない
頭に手が乗せられた、つい、上目遣いに見るとリントさんの手が乗せられた
「反省したか?」
「…はい、ごめんなさい」
「分かればいいんだ」
「おやおや、リント
貴方が父親みたいな事をするなんて」
リントさんが、優希の言葉にハッとして手を離して優希を見た
「久しぶりだな、ユウキ」
「ええ、一年ぶりね
マーカスさんは?」
「自室だ、場所は分かるな?」
「ええ、もちろん」
そのやりとりから、本当に旅団にいたんだなと感じた
アレ?なんで、ハルトは残ったんだろ?
「…息災のようだな、リント」
「まさか、お前の顔を見るはめになるとはな
ハルト・バークマン」
え?え?どういう事!?
なんで、二人して睨み合ってるの?
なに、この一触即発な雰囲気
だ、誰か助けてっ




