第10話 ちょっとだけ、お出掛け
10話目になりました
僕の初めての依頼から、2日経った
ミリアさんから、その依頼の報酬金の半分を貰えた
これが、僕の初の所持金になる
お金の単位は、『ミル』と言うらしい
これも、教わったもの
僕の所持金は、1800ミルになった
貯金だな、とりあえずは
盗賊を捕まえずに、倒しただけなのに
3600ミルになるのか~、町長さんの支払いが良いだけだろうか?
まあ、いいや
昼間は庭で、魔法の練習(初級魔法を少しなら、使えるようになった)
リントさん達は、出かけてしまっていないから自由時間だ
ようやく、この世界の文字の読み書きが出来るようになってきたのだ
だったら、出かけてみたくなると言うもの
マーカスさんにも、「いつまで引きこもってるの?」と言われてるし
帽子を被り、玄関に向かう
ちょうど、マーカスさんが書斎から出てきた
「おや、シア君
お出掛けかな?」
「あ、団長」
「団長はやめな、堅苦しいから
というか、昨日までマーカスさんと呼んでたよね?」
「なんとなく、呼んでみたくなっただけです。」
「なんとなくかー、ふーん、そうかぁ。
で、町へ繰り出すの?」
「はい、そうするつもりです」
「そっか、ウチの末っ子も、ようやく出かけるようになって、母さん、感激」
よよ、と言って泣き真似をしだすマーカスさん
母さん、って。男性なんだし父さんじゃあ?
「いいかい?知らない人についていったらダメだよ?」
「むぅ……分かってます」
「よろしい、なら、いってらっしゃい」
手を振って、見送ってくれるマーカスさんに手を振り返して外に出た
「さあて、どうしようか?」
全くのノープランだしね
大通りに出てみよう
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
大通りは、リントさんに剣を買って貰った時と同様に人がいっぱいいた
その人の流れに、ついていき、周りを見回す
露店もあり、そこで買い物してる人もいれば
店の中に入っていく人や親子
とにかく、たくさんいた
すれ違う人には、エルフや犬耳を生やし背中に大剣を背負った男性とか冒険者もいるようだ
「……たまに、人に見られてる?」
いやいや、ありえない
帽子被ってるし、服は、依頼の時の服装だし
変なとこは、ないはず
違うところは、髪を結んでない事だけだ
剣は置いてきてるし
「気のせいだ、自惚れちゃダメだ」
いくら、初めて自分の姿を見た時に可愛いと思ったからって、周りがそう思うわけじゃないし
だけどなー、見られている
なんか、変なとこあるのかな?
「おや、シア君
今日は、一人かな?」
後ろから、声を掛けられた
誰だろうと振り向く
「…あ、町長さん」
「やあ、やけに目立ってる娘さんがいると思ったら君だったか」
愉快愉快、と大笑いする町長さん
この人の登場で、人が僕を見なくなった気がする
「そんなに目立ちますか?」
「もちろん、君みたいに可愛いければ
そのオッドアイも原因かもな」
「…は、はあ」
目立ってたのか、じゃあ気のせいじゃなかったんだ
でも、なんで、町長が大通りにいるの?
というか、この人が一番目立ってる気がする
「おや?
なぜ、私がいるのかと不思議そうな顔だね」
いえ、まだ何も言ってません
「私は、サボりだよ
時には息抜きも、必要だからな」
「サボり!?」
「うむ、根を詰めてばかりでは、捗らないからね」
それで、いいのかな?
何かがおかしい気がするけど
「折角出会ったのだ、広場でクレープでも食べるかね?」
「え、でも」
「私のお願いが聞けないのかね?」
ぞくぞく、なんか背筋に寒気が!?
頷こう、とにかく頷こう!!
「よし、では行くか」
歩き出す町長について歩く、どうしてこうなった!?
目的なんか、なかったけど
だからといってこの人と一緒とか思わないから
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「広場に着いたね、さて、屋台はあったあった」
僕にベンチで座ってるように言って、すたすたと屋台の方へ歩いていった
え~と、ベンチか
ちょうど、屋台から見て向かい側にあるベンチにしよ
「ふー、疲れた」
腰かけて、辺りを見回す
子供たちが走り回り、大人は読書や話し合いをしている人がいた
広いな、ここ
「お待たせ、いやいや、相変わらず人が多くて助かる」
「助かる?」
「追っ手から、見つかり難くなる
さ、これを食べなさい」
「あ、はい、ありがとうございます」
僕の横に座り、差し出されたクレープを受け取り、食べる
甘くて美味しい
「アレ?でも、お金」
「私の折角のー」
「ありがとうございます」
「うむ、それでいい」
こわっ、なんか恐いって
目付きが鋭くなるから、威圧感が半端ない
あと、顔を近づけないで恐いから、眼力半端ないから
あ、そだ話題を作るんだ
「町長は、旅団についてご存知ですか?」
「マーカス殿のかね?」
「はい、旅団なのに旅しないなー、と気になったので」
前から気になってた事を聞いてみる
町長が知ってるとは限らないけど
「聴いた話ではね
ちょうど80年前に、目的が達成感されてこの町に落ち着いたらしい」
「って、知ってるんですか!?」
「ん?私も昔に気になって尋ねた事があるからね
現在は、町に留まり、去るかどうかは当分の間は未定だそうだ」
「あ、教えてくれてありがとうございます」
「ちょーちょー、町長はどこですかー!!」
町長の眉は、ぴくりと動いた
面倒なのが来たといった感じ
「探しましたよ、町長
ささ、戻りましょう」
「おやら秘書くんか
では、私は行くよ
明日は、頑張りたまえ」
「明日?明日なんかあるんですか?」
「それは、マーカス殿に聞きなさい
では、さらば」
片手を挙げ、ダッシュで人混みの中に入っていった
「あぁ!?いた!!
待ちなさい、おじさまー!!」
「む、姪までいたか」
「ちょっと、そっちは違いますよ!?
ちょーちょー、どこに行くんですかー!?」
「ハッハッハ、私はここだ!」
人混みの中、何だか楽しそうな会話が聞こえていた
あ、そうだ、クレープ食べなきゃ
ん~、美味しい美味しい
「…何してるんだ?」
「クレープを、食べてます」
「そうか、で、なぜ?」
「散策だからですよ、リントさん」
食べ終えて、クレープの包み紙を丸めて、ゴミ箱に捨てる
リントさんは、正面に立ち呆れた表情をしていた
「よく、僕だってわかりましたね」
「ん?勘だ
でなくても、近づいて顔をこっそり窺うだけだ」
勘、か
僕も勘で分かるようになりたいな
立ち上がり、リントさんの横に立つ
「目的は終わったか?」
「思わぬ人の登場で、もういいです
リントさんは?」
「調べ物が、進展なしでね
諦めた、さて、帰るか」
「はい」
並んで歩く、なんか父さんみたいだ
や、性格とかは似てないけど
「どうした?」
「なんか、父さんといるみたいだなーって」
顔をしかめるリントさん、まずかったかな?やっぱり
「私が、そう呼ばれる権利はないな
なにせ、君とは仕事仲間であって、家族ではない
それとも、君は君くらいの娘がいてもおかしくないくらい私が老けてると?」
「ご、ごめんなさい、忘れてもらえると嬉しいですっ」
「はは
そうか、なら、いいだろう」
むぅ、下手な事は言わないようにしよう
怒らせるかもしれないし
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
拠点につき、居間に入るとマーカスさんから重大発表があると言われた
「それで、どんな内容よ?」
「よく聞いてくれた、ミリア」
僕らを見回すと、軽く咳払いする
「はよ、しろや」
デイビットさんが、金槌を投げる
それを器用にキャッチし、投げ返した
「明日、町から少し離れた場所に行き
デイビット以外の面子で、仕事しまーす♪」
「「はぁ!?」」




