城-04
長さが一定でないですねー(^_^;)これはちょっと長い?のかな?
「肝心なあなたの特別な力、それはね、銀の鷹を見つける力なのよ。」
「銀の鷹?」
銀色の鷹なのだろうか?突然変異?
でも、そんなの誰にでも見えるはずでは・・・、ないのか?
これがファンタジーな世界なのか?
「鷹の精霊とか言った方が近いのかしら。
本当に銀色の鷹かもしれないし、銀色をした何かかもしれないわ。
いずれにしろ貴方にしか見えないの、絹花。」
「それが見えるからって、何で狙われないといけないんですか?」
「銀の鷹には、大いなる力が隠されている、とされているの。
世界を変える力があると。だからこそ悪は銀の鷹を欲しがる。
そしてその銀の鷹を探せる唯一の存在を狙うの。」
やばい、本格的にファンタジーの世界でした。
何かわからない銀の鷹と、悪?悪の組織?マジで?
「悪、って、誰のことなんですか?」
「それもわからないの。
人の形を取るのか、概念なのか、精霊なのか。
全てが謎。
でも、絶対的な悪であることは否定できない存在、とされている。」
なんだかすごい力なんだか、すごい危ないんだかよくわからないなぁ。
「銀の鷹も悪の存在も、とっても不明瞭なんですね。」
「伝説なのよ。全て伝説。本当かどうかは誰にもわからない。
でもね、前に銀の鷹が現れたのは千年前だというわ。
そのときに銀の鷹を見つけた王子は、銀の鷹を守って命を落とした、とされている。
しかも王家に三番目の子供が生まれるのは本当に稀なの。
それを知っているから、お父様もお母様もあの世界に行ったのよ。
あなたが大きくなるまで、あなたを守るために。」
うー。父さんと母さんは、そんな千年前の伝説で本当かどうかもわからないことなのに、
まだ小さいお姉さんとお兄さんを残して別の世界で暮らす決断をしてくれたんだ。
ありがたいけど…、重い。重すぎる。
でも、思いと言っていても仕方ない。これが現実。
だとしたら。
「それで、私がこの世界に来た、ということは、
私はその銀の鷹を探さなくちゃいけない時期が来たから、ってことなんですか?」
まずはその役割に、目的に沿ってみるしかないのかな、と。
「それはわからないわ。
私はあくまでも伝説と王族を取り巻く事実だけを語りました。
この後どうなるか、わからないわ。
でもね、銀の鷹は、あなたが見つけない限り、一人で飛び続けるしかないの。
それは確かなことよ。
だってそうでしょう?あなたにしか見つけられないのだから。」
へ?
だって、なんかよく知らないけど、大いなる力があるんでしょう?
「銀の鷹は、見つけてあげることがいいことなんでしょうか。
もしも私が銀の鷹を見つけた、としたら、お姉さまはどうなさるんですか?」
「そうねぇ、悪の手には渡したくないと思うけれど、
それ以外は銀の鷹の思うとおりにすればいいと思うわ。
別に私はこの国の人が穏やかに暮らしていければいいと思うけれど、
何かの力で世界を変えたいと思わないし。
そもそも世界を変える力なんて物騒なもの、私に使いこなせるのかなんてわからないしね。
まぁ、ここにいたいのならここにいたらいいし、どこかに行きたいならとめないわ。
ただ、せっかくお知り合いになったんなら、無事に過ごせることをを祈り続けるわね。」
・・・。
「ムリに捕まえたりしない?」
「そんなことできないし、する必要もないもの。でも、一度会ってみたいのは確かね。」
・・・このお人よしっぷり。
普通、世界を手に入れる、とかって、為政者の夢じゃないの?
野心とかそういうのまるでないんだなー。
この人は、絶対にあの父の、母の、娘だと思う。
大好きすぎる!
「・・・・・見つけるか、見つけられるかどうか、考えてみます。」
「そうね、そんなに簡単に出せる結論ではないわね。
私はあなたにはその力があるって思うけれど、見つけられるかどうかすら伝説ではあるのだし。
では、次に世界の扉が開く一週間後まで、まずはこの城に滞在してね。
どちらにしても扉が開かないから、あなたはそれまでもとの世界には戻れないのよ。
今ここにいる皆に、それぞれ案内してもらうから、まずはこの城の中心を見てちょうだい。
そして意見や改善点や素敵なことがあったら、教えてもらえるとうれしいわ。
一週間たって、もう少しここにいようかな、と思うようなら、もちろん大歓迎だし。
ずっとここにいてくれると、本当にうれしいのだけれど…。」
「・・・お姉さま、欲がないって言われませんか?」
「あら、少し話しただけなのに、絹花もそう思っちゃうの?
私、自分の利益を計算するのが不得意なのよ。
国のことなら何とか考えるけど、私にできるのは改革ではなくて維持だってわかっているの。」
この人は、私にムリに銀の鷹を探さなくてもいいって、言うんだ。
その力は伝説とは言え、悪い存在が狙うくらいに大きいもので。
しかも見つけたとしても銀の鷹の好きにさせてくれるって。
自分にそんな力があるってわかっても、そんな存在をたとえ見つけられたとしても、
私のせいで誰かが拘束されたり、無理強いされたりするのは嫌だなって、思ったけれど。
お姉さまは私が嫌だと思うことは、どんなことでもしないでいい、って言っているんだ。
・・・なんだかまた涙が出てきそうだ、よくわかんないけど。
まだ出会ってちょっとだけど、お姉さま、大好きだー!
と、じんわり感動していると、大きな足音が聞こえる。
大きな足音、というか、誰かが全力ダッシュしてる音。
だ、誰?
扉が開くと、誰かを探す風で、王子様が入ってきた。
そう、王子様。王子様と言わずして何と言おう。
金髪の巻き毛に青い目。
って、もしかしてもしかして、うわー、もしかして?!
「絹花?絹花なのかい?
待っていたよ、よく無事に着いたね。」
…むぎゅ。
いきなり王子様に抱きしめられる。
ぎゅー、って、おいおい、ちょっと待って。
王子様、苦しい。ギブ!もうギブ!
華奢に見えるのに、何その力技!
「こら、ハル。ぬいぐるみじゃないんだから、とりあえず離せ!落ち着け!」
「そうだぞ!
俺だって叔父さんだぞ、久しぶりー、って、抱きしめたいところを
こんな場所だから一応こらえたって言うのに。
しかも、俺だってお前に力いっぱい抱きつかれたら、痛いんだからな!
華奢な見かけのくせにこの莫迦力!」
カイと叔父さんがあわてて金髪王子をたしなめる。
でも、そのたしなめ方もどうなの、いったい。
「ああ、ごめんごめん。つい、ね。大丈夫だった、絹花?」
王子様がはっと気づいて、ようやく腕を緩めてくれる。
そして、満面の笑みでにっこり笑って私の顔を覗き込んでいる…。
うわー、ありえない。
ありえない、のだが、ここまでの展開、まんべんなくありえないので。
あの美女がお姉さまだったら、この王子様も、もしかしたらもしかしてもしかすると。
「ええと…、その…。お兄さま、ですか?」
…恐る恐る聞いてみたら、ものすごいうれしそうな顔で笑った。
うわー、もう大変だ。
王子様スマイル、大盤振る舞いだよ!
「そう、ハルだ。よく来たね、絹花。」
それにしても。
しゃべり始めるといつまでもボケ続けるから私がツッコミ入れないと止まらなかったけど、
確かに父さんも母さんもしゃべらなければ、とっても綺麗だったけど。
なんで私はあの二人の娘なのにこんななんだろう、って思ったこともあったけど。
こんなに綺麗な娘と息子がいるんだから、逆に私のほうが本当の娘か怪しいくらいだなぁ…。
とほほ。
「ハル、遅かったのね。
もう少しでリセに様子を見に行ってもらおうかと思っていたところだったのよ。」
「姉上、申し訳ありません。ちょっと塔の方まで行っていたもので。」
ああ、美形姉弟の会話!目の保養だわー。
「そうなの、それでは仕方がないわね。
ご苦労様。さて、これでそろったわね。
絹花、では改めてみんなを紹介しましょうね。」
そうだ、叔父さんでびっくりして、つい話を先に聞いたけど、まだ知らない人もいるし。
「ここにいるのは私の補佐役たち。
リナス叔父さまはわかるわね。
叔父さまは『時渡り』と言って、あのゲートを何度も行き来できる力を持った人です。」
「え、一回だけじゃないの?」
「ああ、普通はね、一回だけなんだけど、時渡りだけは何度でも行き来できるんだ。
だからお前のところにも年に一度行っただろう?」
「へえ、そうなんだ。そんな人は叔父さん以外にも何人もいるの?」
「いや、時渡りは一人だけ。俺が死んだら、誰かが時渡りの力を継ぐことになるな。」
「そうなんだ。」
たった一人だけ行き来できる力を持つって、なんだか不思議だなぁ。
「カイはわかるわね。
あなたを迎えに行ってくれたけど、これでも本当は大賢者の一人で、
賢者の塔でふんぞり返っているような偉い人なのよ。」
くすくす笑いながらお姉さまはカイを紹介してくれる。
それにしてもふんぞり返ってるって!
きっと豪華な椅子にものすごい勢いでどっかり座って偉そうに!
「…お前、今、私がものすごい椅子に、えらそうに座っているのを想像しただろう?」
え、どうしてわかるのよっ?!
「そ、そんなこと思ってないわよ。変なこと言わないでよ!」
カイはフン、とちょっとすねたような顔をして笑いつつ、お姉さまに言う。
「どうだかな、顔に書いてあるぞ。
陛下も変なことをおっしゃらないでください!
所詮私はあの爺様たちの間ではただのハナタレ小僧ですからね。」
相変わらずくすくす笑うお姉さま。
「それもそうね、あの人たちの前では誰でも仕方がないけれどね。
それから、エディは初めてよね。
エディは大神官の一人。賢者の資格もあるんだけど、神官でいるのよね。」
さっきからそっとリセさんの隣に立っていた穏やかそうな人が、ゆっくりと微笑む。
栗毛色の髪がふわりと揺れる。
いや、本当にかわいい。絶対かわいい。
「賢者より神官の方があっているみたいですからね、僕には。
はじめまして、絹花。」
「はじめまして、エディさん。あの、よろしくお願いします。」
「はい、こちらこそ。ああ、エディと呼んでくれて構いませんよ。」
「いえいえ、そんなわけには。」
「あなたのことはリナス様から話を聞いて、陛下とハルがいつも噂をしていたから、
あまり初対面のようには感じないのです。
だから、どうか普通に接してくださいね?」
ああ、またにこりと笑われた…!
「カイのことはもう呼び捨てにしているようなのに、変な子ね。
まぁ、好きにお呼びなさいな。
そしてリセね。
リセは別に私の侍女をしてくれているわけでもなくてね、れっきとした舞姫なのよ。」
リセさんがこちらを見る。
舞姫?ってよくわからないけど、お似合いです!
「まぁ、陛下の侍女役はたまに趣味でやっているようなものだな。
滞在中は絹花の面倒は私が見ようと思っているから、何かあったら何でも言ってくれていい。
なに、舞姫の長からもお許しはいただいたので大丈夫だ。」
「舞姫って、踊るのがお仕事?」
「まぁな。
神殿には女性の神官もいるが、舞姫も神殿に属している。
その仕事は文字通り踊ること。
精霊に踊りをささげるんだ。」
「リセさんが踊るのみてみたいなぁ、きっとすごく素敵な気がする。」
というか、本当にタカラヅカみたいにかっこよくて素敵なんだろうなぁ。
「ありがとう、私が案内したときに、ではお見せしようか。」
…?案内?
「最後はハルね。
ハルは王子でもあるから、まぁ、王子ですって城にいればいいんだけど、
この人は今は騎士団にいるのよ。
一応騎士団長をしているけれど。」
「一応は余計でしょう、姉上。
これでも頑張ってるんですから。」
にっこりこちらに笑いかけながらお兄様が答える。
「絹花、ぜひ騎士団にも遊びに来てくれ。
自慢の妹、と紹介したいところだが、しばらくは黙っていろ、でしょう?姉上。」
え?黙っていろ、ってどういうこと?
「その通りよ、ハル。
絹花、あなたはしばらくの間、私の妹である、ということは隠しておいてもらうわ。
悪がどんな存在かもわからない。
しばらくは異国から迷い込んだ客人と言うことに城では扱います。
そして、これから賢者の塔、神殿、騎士団、舞姫の間、時渡りの塔と
回ってもらおうと思うのだけど、その間も偽名で変装して行ってもらうからそのつもりでね。」
「変装ですか。」
「そう、変装。そして偽名。
とりあえず明日はカイ、あなたが賢者の塔を案内してあげて頂戴。」
「私ですか?」
「そうよ、せっかくお迎えに行ってくれたんだもの。
絹花だってまずは顔見知りからの方がいいでしょう。
明日の朝、迎えに来て頂戴ね。」
「はぁ、仰せのままに。」
「さ、では、今日はこれで解散。
絹花は食事までまだ間があるわ。
湯にでも入ってゆっくりしてね。
ああ、夕食はね、必ず案内してくれた人と私とで毎日とりましょうね。
その日の出来事を報告してちょうだい。
今日はせっかくだから、ハルと叔父さま、家族四人でいただきましょうか。」
お姉さまがそう言って、その驚愕のご対面は終了したのだった。
第二章終了です。




