城-02
こんなに大量の美男美女がそろっているところに、居合わせたことはない気がする。
いや、うちのおとーさんもおかーさんも美男美女だったけどさ。。。
まず、何といっても女王陛下。
金色の巻き毛はふわふわで、白いドレスがよく似合う。
かわいらしいのににじみ出る威厳、というものが感じられ、ほんとうに女王陛下だ、って思う。
でも、思っていたよりずっとお若い!
もっとお年を召していらっしゃるのかと思っていた。
淡い碧色の瞳が周囲を見渡し、にこりと私に微笑みかけた。
うわー、これ反則!!
女王様の威厳はあるけど、もうなんて言ったらいいか!!
天使とか女神様って感じの方が近い気がする!!見たことないけど!!
背筋を伸ばしてすっと座っていらっしゃるところは、なんかもう神々しい。。。
女王陛下の横には4人の美男美女が並んでいる。
まずリセさん。
鈴を持った先触れの人たちにうなずくと、彼女たちは去っていった。
(そもそもその先触れの人たちも、美人ばかりだったんだけど。)
そんなしぐさもきりっとしていて、本当に女子高だったら大モテだろう、なんてバカなことを考えてみる。
結構派手目の美人さんだから、ドレスのシンプルさがますます美しさを引き立てている。
なんかこう、太陽みたいな明るい感じの存在感がステキすぎ。
カイは、いつのまにかそこにいた。
背、高いなぁ、やっぱり。190センチくらいあるんじゃないかなぁ。
リセさんも175センチくらいありそうだけど、遥かにでかいもんなぁ。
でも、髪を束ねて白い長いローブを着ているから、さっきとは別人のようだ。
髪形のせい?
あー、でもなんか、ちょっとまとっている雰囲気違うな。
発してる何かが違う。もっとオフィシャルな感じだからかな。
何やらちょっとストイックな感じなのに、変な色気があるような。
これまた女の子が、っていうより、おねーさま方が放っておかないだろう、と思わせる。
その隣に、これまた見たこともない美人が二人立っている。
といっても、二人とも男の人だけど。
カイの隣の人は、栗毛色の髪を肩のあたりでそろえていて、薄いベージュの長いローブを着ている。
淡い緑の瞳でやわらかく微笑んでいる様子は、その辺の女の子なんかより、どう考えてもかわいい。
穏やかを絵にかいたような、陽だまりでお昼寝しているわんこみたいな。
しかも眼鏡男子!!
眼鏡外したら、かわいさ250パーセント増量!なんだろうなー。
そしてもう一人はストレートの銀髪を長く伸ばし、後ろで一つに束ねている。
少し年上の。
って、よくよくみたら・・・。
え!!!何で知りあいがここに!?
「おじさん!!どうしてここにいるのよっ!
しばらく見かけないと思っていたけど、おじさんもここに迷い込んでいたの?」
びっくりした。叔父だった。
さすがに見慣れない格好をして、雰囲気が全然違ったので一瞬迷ったが、見間違えるはずもない。
父の弟のリナス叔父さんだ。
ちなみに父はフィンランド人で、リンドルム、母は日本人で玲という。
実は私、ハーフなのだ。
しかも、母は日本人ながらフィンランドで育っており、あまり日本のことは詳しくない。
二人は、フィンランドで出会い、結婚し、父が昔から興味のあった日本に来た。
父は今、大学教授なんてものをやっている。
父がくるくるの金髪なのに叔父はストレートの銀髪で、
昔は「叔父さんはすごいおじーさんなんだ」と思っていたが、もちろん地毛だった。
銀髪なんて見たことなかったから、驚いた。
何でも、お祖母さん、私の曾お祖母さんにあたる人が銀髪だったらしい。
と、そんな両親やら髪の色の話はどうでもよくって!!
「よう、絹花。よく気づいたなぁ、こんな格好だから、わからないかと思ったのに。」
にっこり笑って叔父さんが言う。
「わからないわけがないでしょう!一年ぶりだもの、そんなに変っていないし。」
「そうだよなぁ、一年ぶりだもんな。お前、元気そうだな。よかった。」
「叔父さんこそ元気そうでよかった。今年は来ないのかってウワサしていたんだから。」
叔父は外国をふらふらと飛び回っている。
ジャーナリストのはしくれなんだよ、と言っているけど、記事なんて見たことない。
桜が大好きで、どんなにいろんなところに行っていても、いつも桜の頃に日本にやってくる。
それなのに日本全国あらゆるところの桜が散っても、今年は来なかった。
どうしたのかと家族ではウワサをしていたのだ。
ああ、話し方もなにもかも、叔父さんそのものだ。
知っている人がいて、急に力が抜けて、ちょっと涙が出てきた。
「あら、絹花が泣いちゃったわ。おじ様、ダメじゃありませんか!
だから後でにしてくださいって言ったのに。」
「いやいや、泣かせる気なんてなかったんだよ、レティ。おい絹花、泣かないでくれよ。」
…ぴたっ、と涙は止まった。
何故って?
私以外に叔父さんをおじさんと呼んだ人がいる。
しかも、それは、女王陛下…のような気がする。
リセさんの声じゃないもん。
でも、叔父さんはそんなに年じゃないし、女王陛下に「そこのおじさん」って言われるような見かけでもないし。。。
え、「おじさん」って何か役職とか係とかあったり…、って、もういいわ。
「ヘイカ」も役職じゃなかったから、もう無駄。
「えっと、あの、陛下。
ここに来れば説明してくれる人がいる、と聞いてきたのですが。
説明していただけませんか。
私がここに来たこととか、陛下もリナス叔父さんをおじさんと呼ぶのか、とか。」
びっくりしすぎて声が震える。
だって一番考えられる可能性は、女王陛下が、私の従姉妹、ってことだったから。
あ、それか、叔父さんこっちの世界で誰かと結婚したのかな。
叔父さんは父とは年の離れた弟で、35歳だけど、まだ独身だ。
そっちの方がまだわかりやすいか。うん。
「ごめんなさいね、そんな風に驚かせるつもりじゃなかったのだけれど。
そうね、まずはお話しましょうね。
まず、私の名前はレティシア。
レティって皆呼ぶけれど、あなたには別の呼び方をして欲しいんだけれど。」
これまたにっこり笑って話し始めた女王陛下。
かわいい…、って、見とれてる場合じゃなくて。
別の呼び方?あだ名か??
「別の呼び方ですか?陛下ではなくて?」
女王陛下はそんな私に、ちょっと照れたように答える。
「違うわ。お姉さん、って呼んで欲しいの。」
「へ?」
ものすごいバカっ面だったと思う。
こんなところにいきなり来たのも、叔父さんがいるのも、女王様が叔父さんをおじさんって呼んだのもびっくりした。
でも、一番びっくりしたのはこれだ。
なぜ、私がお姉さんって呼ばなくてはいけないんだ?
いつものようにバカな可能性が頭の中によぎらないくらい、私は真っ白だった。
「私は、あなたの姉なのよ、絹花。」
「実はおねーちゃん」登場です。
あ、ちなみに主人公の名前、「きぬか」と読んでください。




