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銀の鷹  作者: sanana
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そして大団円-03

次の日は、ゲートが開く日。

私が本当は決断をしなくてはいけない日だった。

いやあ、あっという間だったような、長かったような。


しかし、昨日まで寝込んでいたのに

(というか、元気だと言うのに寝込ませたのはカイなのに)、

そんな体調で帰すわけには絶対行かない、とカイは言いはり、

ひとまずあと一週間は様子を見てはどうか、とほかのみんなには勧められた。


もともと、この世界のことをもう少し知りたい、せっかく会えた人たちと

もう少し一緒に過ごしてみたい、と途中から強く思うようになっていた。

ここはおとなしくお勧めに従い、もうしばらくいることにした。


銀の鷹、セレネのことが気がかりでもあったのだ。

セレネは寝覚めてからもこの城にいる。

リセさんとすっかり意気投合したようだ。

だんだんと表情が豊かになっているような気がする。

リセさんも一晩寝たらすっかり元気になったよ、と、満面の笑顔で言ってくれた。

みんな無事で本当によかった。


折りしも5月も終わろうとしているこの時期。

今度大学四年の私は大学院に進むつもりなので、就職活動はない。

研究テーマも決めていて、ひとまず本格的に研究し始める準備中。

本当はそろそろ研究室に顔を出さないといけないんだけど、

まぁ、もう少しは大丈夫かなぁ、と思うことにする。


「だけど、父さんと母さんは、こっちに戻ってきたらいいと思うんだよね。」


私がもしも元の世界に戻る、と決めても、両親はこちらの世界に戻った方がいい、そう思った。

自然に浮かんできたことだった。


黒の風はまた来るのかも知れない。

だけど、もう私は逃げようとは思わない。

私が元の世界に戻るならば、理由は逃げるためではなく、向こうでまだ学びたいことがあるかどうか、だろう。

しかし、それは、成人した娘が一人で考えればいいことであって、

両親は一人の娘のために残る必要はない。

戻りたいなら戻ったらいいのだ。


「というわけで、叔父さん。

 父さんと母さんにこの顛末を伝えて、どうしたいか聞いてきてもらえないかしら?

 本当は私が行きたいんだけど、私、今度戻ったら、もうこっちに来られないんでしょう?」


叔父さんはちょっと頭を抱えてしゃがみこむと、上目づかいで私を見る。

何、そんなに行くのイヤなの?

「あー、やっぱり言うと思ったんだよな、お前なら。

 …もー、わかったよ。とりあえず話してくるよ。

 どうしたいかは、兄さんと義姉さんの考え次第でいいんだな?」


「うん、ここまで育ててもらったし、もし一人で戻るとしても、大丈夫だよ。

 それに叔父さんは来てくれるでしょ?」


もう大丈夫。

戻ったとしても、月並みな言い方だが、一人ではない。

両親も、姉上も兄上もいるのだ。

たとえ違う世界で生きるとしても、私は一人ではないから。


「あ、そうだ、お見送りにいこうかな、私。」

ふとつぶやくと、間髪入れずにつっこまれる。

「ダメだ、お前時の間から、一人で帰れないだろうが。」

「えー、なんとかなるよー、大丈夫だよー、子供じゃないんだから。」

「お前なー、子供だとか大人だとかそういう問題じゃねーんだよっ!」


見送りに行きたい私と、帰れないだろう、と言いはる叔父さん。

話は平行線で、いつまでも終わらないかに見えた。


「あー、もう、二人ともうるっさいですよ。

 わかった、俺が一緒に行けばいいでしょう?」


「「へ?」」


気が付くと、しかめっつらのカイが立っていた。

いつからいたの、カイ?


「カイ、お前どうしたんだ?」


「陛下のところへ来た帰りですよ。

 廊下でそれだけ騒いでいたら、何事かと思うでしょうが。

 俺も休みだし、ついてって、ちゃんと絹花をここまで届ければいいんでしょう?」


わーい、やったー!

「カイ!本当にいいの?ありがとう!」

カイが連れて行ってくれるなら安心だし、あーよかった!と思っていると、

リナス叔父さんがごにょごにょ言いかけ、カイが笑顔で小声で何かを告げる。

でも、私には、何をいっているのか聞こえなかった。


「あーあ、あの満面の笑顔。嬉しそうったらないね、かわいいなぁ。

 それにしてもカイ、お前、ほんとに…」

「あー、もう、うるっさいですよ、アンタ。

 そのあと続けて言ったら、どうなっても知りませんよ?

 俺がここで送らないって言ったら、絶対絹花はこっそりあんたの後を

 つけていくに決まってますけど、いいんですね?

 ついでにそんなことになったら、リセがどれだけ怒り狂うかわかりませんけど、

 俺止めませんからね。いいんですね?」

「…ほんとすみません、よろしくお願いします。」

 


次で最後でーす。

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