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銀の鷹  作者: sanana
22/29

絹花-01

年内完成とか、夢みたいなことを言っていた昨年が遠いことのようだ(笑)

小さいころから、我が家には来客が絶えなかった。

大学教授をしている父の祖国からやってきたという沢山の客人たちは、

私にもとても優しくしてくれて、いつも遊んでもらっていた。

今にして思えば、彼らはゲートを越えてやってきたのだろう。

あんまり違和感なかったのは、私が変にならされていたのだろうか。

と言って、日頃の生活で特別困ったことはなかったから、

両親はうまいこと折り合いをつけて育ててくれたのだろう。


そういえば、教えてもらった遊びを近所の子たちとやると、

「そんな遊び、初めて知った!絹花ちゃんすごい!」と言われた。

・・・知ってるわけないよ、よくいじめられなかったな。

異世界の遊びだったよ、たぶんそれ。


そんなわけで、兄弟姉妹はいなくても、誰かはそばにいた。

叔父さんも大好きだった。

でも、あこがれていたんだ。

私に兄弟がいたらよかったのにって。


小さいころ一度両親に言ったことがあったっけ。

「私もきょうだいがほしいなぁ。」

そう言った私を、母は少し悲しそうな目で見つめた。

「…そうねぇ。絹花にお姉ちゃんやお兄ちゃんがいたらどうする?」

「とってもうれしい!あやとりしたりおにごっこしたりするの!」

「そうよね。一人っ子はさみしい?」

「さみしくないよ。みんなあそんでくれるし。

 でも、ななみちゃんやかずとくんがちょっとうらやましい。」

「…そう。」


あの時の母の微笑みを今でも覚えている。

とても悲しそうだったから、もう言ってはいけないのだと思っていた。


そして、この世界に突然来て、お姉さまとお兄さまに会った。

あまりにキラッキラに美しすぎて、自分のDNAを疑ったけれども。

会ってみたら、案外男前だけど天然に優しいお姉さまと

かっこいいのにかわいすぎるお兄さまだった。


この人たちが大好きだと、理屈でなく思い知る。


それはまさしく、DNAの叫びなのかもしれない。


この人たちは、私と同じ分類なのだという叫び。


恋とは違う、でももっと強い、血の叫び。



大切なお姉さま、いつも笑っていてほしいの。


あなたは太陽だと思うから。


この国においても。


私にとっても。


そのためにできることなら、なんでもする。


そのくらいにはもう、お姉さまのことが大好きになったよ。



だから、お姉さまを『消す』なんて、絶対に許さない。



「お姉さま!」


「絹花!どうして!」


今なら城に行ける、と、わかったなんとなく思った。

どのくらいの時間が経ったのかはわからない。

ほんの一瞬だったような気がする。

…テレポテーションというやつかしら。この際どうでもいいけれど。


目の前にはお姉さまとハルお兄様、リセさんがいる。

ハルお兄様は剣を手に、背中にリセさんとお姉さまをかばっている。

こんな時じゃなかったら、見惚れる王子様っぷりだ。

そしてその三人と相対しているのは。


「いまいましい、三番目の娘よ。」


「あなたになんか自由にさせないんだから。」


エディさんの中に突然現われた黒の風と、手首をつかまれ身動きができないセレネがいる。

私はハルお兄さまと黒の風の間に駆け込む。

後ろからカイと叔父さんが私の名前を呼ぶのが聞こえるけど、気にしていられない。


「エディさんから出て行って!あなたはその人の中にいる資格はない!」


黒の風をにらみつけて言う。

だけど、そんなことを少しも気に留めないように、黒の風が少し笑ったように言う。


「ふふふ。資格、だと?十分にあるとも。」


なにそれ!


「この男の心の暗黒は深いぞ。

 愛するものが女王であり、それを守る力を欲するその強さ。

 そして、友たちの方が自らより力は優っていると思い、自分には何ができるのかを悩む。

 嫉妬はどんどん降り積もり、愛する心は行き場を失い、そして自らの力の中にうずもれる。

 決してその力は弱くはないのに、自らの心に暗黒を飼う。」


エディさんの体をのっとった黒い風の目は濃い緑色。

いつものエディさんの穏やかな淡い緑色の瞳とは違う。


green-eyed monster


シェイクスピアの言うとおり、嫉妬は緑色の目をした怪物なのか?


シェイクスピアをちゃんと読んだものは多くないのですが、嫉妬が緑の目の怪物である、というのが、心に残っていました♪


ここから毎日更新予定。完結しますよー!

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