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銀の鷹  作者: sanana
15/29

銀の鷹―02

お久しぶりになりました。

こちらもコンスタントに進めてまいりたいと思いますです。

毎日、お城近辺ツアーが続いている。

いい加減終わるかと思っていたが、やはり全員分周ることになるらしい。

着替えた後、毎朝リセさんの案内でお姉さまにご挨拶して、

そこでその日にご一緒する人と会っていたのだが、今日は違う。


「そんな、夕食だけでなく朝ごはんも一緒に食べようよ!」

と、ハルお兄さまがのたまった。

もー。しょうがないわねぇ、といいながらも、

お姉さまもにこにこしながら、結局朝食を3人で食べることに。

でも…。


「だから、私がお茶を」

「いいえ、陛下にやらせては、せっかくのお茶が無駄になります。」

「リセ、ひどいわ…」

「本当のことではございませんか!

 先日の花茶をだめにしてくださったこと、まだ根に持っておりますよ、私。」

「ほら絹花。こっちもおいしいよ。

 たくさん食べるんだよ!

 ああ、今日は騎士団を案内できるなんて、本当にうれしいな。

 夢みたいだよ!」


あーあ。

リセさんが面倒を見てくれる様子だと思ったら、

お茶淹れるのにお姉さまとリセさんがバトルを…。

そしてそれを全く意にも介さないハル兄さま…。

どないせいっちゅうねん。

ご飯がすすまなーい!!!


やっとのことで朝食を済ませ、ハル兄さまの案内で騎士団を周る。

「シリルー。こっちだよ。こっちが騎士団長の部屋でねー。」

お兄様はどうみても浮かれていて、あまりの浮かれすぎに

私は「ハルの恋人」と噂されることとなったのだが、それはまた別の話。

(もちろん男装していたのだが)


 それにしても、通りすがりの騎士だけでなく、居合わせた女性にも

爽やかに挨拶するハル兄様は、どうみても天然の人タラシという感じだった。

(女性だけでなく、男性もことごとくメロメロに!)

無意識って、天然って恐ろしいね!


「シリルも剣を習ったことがあるの?」

剣の練習場を案内してくれつつ、お兄様に聞かれる。

「ええ、ここの剣とは違うとは思いますが、子供の頃から習っていました。」


私は両親の方針で、剣道と居合い、それから空手を習いに行っていた。

今にして思えば、護身の意味もあったのかもしれないが、

その中で一番好きなのが剣道だったので、剣道だけやりたくて、

小さい頃はなんでそんなにいっぱいやらなくちゃいけないのか?と思っていた。

ちなみに居合いも続けているので、一応真剣も手にしたことがある。


「じゃあ、少し練習していくかい?」

「お邪魔じゃないなら、少しだけ。でも、手加減してくださいね?」

「あはは、もちろんだよ。

 でも、あんまり手加減は必要ないんじゃないかと思うけどね。

 シリル、結構強いでしょ?」


お兄様はそう言ってにっこり笑う。

いや、手加減必要だと思いますよ。

っていうか、お願いですから手加減してくださいよ。

だってアナタ、私の間違いでなければ…、相当強いでしょう?

手合わせする前からわかりますから。


木刀を借りてお兄様と向き合う。

久しぶりの感触は、随分落ち着くものだった。

防具は無いようなので…、まぁ、顔は気をつけよう…。


何故か周りにはギャラリーができてしまった。

王子が手合わせをするのは珍しいのだろうか。

それとも、ハル兄さまが手合わせをするのが珍しいのかな?


「じゃ、いくよ。」

「はい、お願いします。」


見よう見まねで始まりの礼をすると、すぐに動けなくなる。

お兄様の気配が、先ほどの能天気な爽やか王子様から一変したからだ。

…やっぱりものすごく強いんじゃないかー!

サギー!!


「シリルも結構強いんだね。

 でも、このままじゃつまらないから、じゃ、いくよ。」

そう言って、天然王子様の甘い甘い笑顔でお兄様は木刀を構えなおすと、

いきなり打ち込んできた。

多分多少は手加減してくれていると思うが、受け止めるのが精一杯で、

どうしても払うことができない。

それでも何とか払って、今度はこちらから打ち込むと、やはり軽くかわされる。


そんな打ち合いを何度かしているうちに、私はまた目の端に銀色の何かを見たような気がした。

賢者の塔で、最後に見た銀色の光のようなものだった。

何だろう、何だか気になる。


「隙ありっ」

うっかり銀色の光に気をとられた瞬間、お兄様の木刀が私の木刀を打ち落とした。

うわー、結構悔しいかもしれない、これは。


「参りました。」

お兄様は私の木刀を拾って手渡すと、小さい子を叱るような顔つきで私を見る。

「今、何か別のことを考えたでしょう。

 それまで全く隙がなかったのにね。」

「す、すみません。ちょっと変なものが見えた気がして。」

「変なもの?」

小首を傾げてこちらをうかがう。

なんでそんなにかわいいのー、もうやめてー!

多少あわてて否定することにする。


「あ、なんでもないんです。多分気のせいですから。」

連日の視察(?)で、目でも疲れているんだろうか。

それにしても辺りを見回しても全く銀色の影はないなぁ。

本当に気のせいなのだろう、おそらく。


「そう?なんでもないならいいけど。

 何かあったらちゃんと言うんだよ?」


あー、お兄様、近い、近いっす!

そうやって人の顔を覗き込んで、ものすごい近くで話さないでください!

周りの人が生温かい目でこっち見てますってば!!

王子様の恋人の座を巡っての戦いなんて、ファンタジーの定番でしょう??

つーか、マジで彼女いないんですか?!

もうこの際彼氏でもいいですけど!!

やーめーてー、まだ死にたくなーい!

嫉妬が、嫉妬が怖いーーーーー。


実はハル兄さまに憧れている女の子がいても、

全く気がつかないで平等に笑顔で返されて終わりなことや、

老若男女問わずあまりに優しすぎるので、

もし恋人発覚でも誰も嫉妬したりしないなんてこと、

知らなかった私は、そんなに怯えてその日を終えた。

早く言ってよ―!!!

ハルが一番天然で一番かわいい設定。

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