表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の鷹  作者: sanana
11/29

七人目の大賢者―02

ちょっと間が空きました・・・。スミマセン。

「ここが私の部屋だ。」


しっかり礼の仕方を身につけた後(笑)、ひとしきり塔の中を見せてもらって、

一休みしようと、カイの部屋へ案内してもらった。


塔の上の方にある、七つの大賢者の部屋のうちの一つだと言う。

実は塔は八角形で、真ん中の階段を中心にした回廊と部屋が並ぶ。

大賢者の部屋がある階は、ちょうど八等分にした辺の一つ一つが部屋、残りの一つは

広くなっていて、大きなテーブルと椅子が置いてある。

大食堂!みたいな感じだったが、カイいわく、ここで大賢者の話しあいをするのだそうだ。


「でも、部屋になってなくて、聞こえちゃいけない話とかできないんじゃない?」

素朴な疑問をしてみた。

だって、重要なこととか話しあうんじゃないの?

「そういう時は、話が聞こえなくなるようにするから問題ない。」

け、結界みたいなもんか…。

「へー・・・・・」

もう、ファンタジーすぎても驚かないけどさー、そうかー、結界まで出てくるのかー。


カイの部屋は広いのに、造り付けの棚に大きなテーブルと椅子、来客用の長椅子と

小さなテーブルがあるくらいで、とてもシンプルだった。

さすがに棚には本がぎっしり並んでいたけど。

日当たりのいい大きな窓辺には、小さな木の鉢が一つだけ置いてある。


来客用の長椅子は思ったより居心地がよく、うっかり長居をしてしまいそうになる。

香りのいいお茶を出してもらって、更にリラックスしてきた。


「大賢者って七人いるのよね。」

「いや、六人だ。」

「え、だって大賢者の部屋って七つあるってさっき言ったじゃない。」

残りの一辺があの広間なんでしょう?


「ああ、いつか七人目の大賢者がいた時期があったのだそうだ。

 そして、今後いつか現れるかもしれないその人のために部屋だけは残っているが、

 通常は六人だ。

 七人目は特別なんだ。その認められ方自体が特殊らしいしな。」

「賢者の石、だっけ?それに選ばれるんじゃないってこと?」

「ああ、直接全ての精霊がその人に祝福を贈るらしい、というところくらいしか

 わかっていない。もしかしたらヨール様ならもう少しご存知かもしれないが。」

「全精霊が祝福、ってなんだかすごいね。ところで、そのヨール様ってどなたなの?」


「ああ、ヨール様は…」

カイが話しかけたその瞬間、部屋のドアがノックされた。

「はい。」

カイが答えてドアへ向かう。

開いたそこには、なんともかわいらしいとしか言いようのないおじいちゃんが

そっと佇んでいた。


「ヨール様、いかがなさいました?今日はお休みのはずでは?」


え、この人がさっきの噂のヨール様?

確かに博識だって言われても納得いく風格があるといえばあるけど、

結構かわいいおじいちゃんと言われたらそれまでって言うか。


「ちょっと思い出したことがありましての。

 塔に来てみたらなにやら気配がしますし、こうして訪ねてみた、と言うわけでの。

 入ってもよろしいかの。」

「ええ、もちろんです、どうぞ。」


おじいちゃんは長椅子の私の隣にちょこん、と座ると、私を見てにっこりと微笑んだ。

つられてにっこり笑ってしまった。

カイが、とてもこの人のことを大好きなトーンで話そうとしていたから、

きっと尊敬していてすごく素敵な人なんだろうなぁ、という先入観も手伝って。

そういえば私、この国に来て以来、笑いかけられてばかりだな。

なんだかうれしい。


「今、まじないをかけたでの、ここでの話は聞こうとする大賢者以外のものには

 聞こえないはずじゃ。

 お前さん、よく来たの。

 名前を教えてくれるかな。」


おお!こんなに早く結界?を体験するとは!!

って、そうじゃなくて!

えっとー、これはー、やっぱり、もしかしなくてもちゃんとわかってるってことだよ、ね?

カイの方を見ると、ちょっと苦笑してうなずく。


「はい、はじめまして、絹花と言います。

 今日はシリルって名前なんですけど。」

「ほう、絹花、か。よい名前じゃの。

 わしはヨールと申す。ここのカイと同じく大賢者の一人じゃ。」

カイがヨール様にお茶を出しながら、言う。

「絹花、ヨール様は大賢者のお一人だが、三年前まで、女王陛下の補佐役を務められていた。

 そして、私のお師匠様だ。」

わー、お師匠様なんだ。大好きなんだろうなー。

って、お姉さまの補佐役、ってことは、お姉さまが女王になった辺りの経緯も

もちろんご存知で、だから私のこともご存知なんだろうなぁ。

ん?でも、さっき気配っていった?


「ほっほっほ。

 できが悪くても弟子は弟子ですからの。

 ちょっとの恩は大いに返してもらわねば師匠なんぞ損な役割での。

 面倒な補佐役をこのハナタレ小僧に任せて、今は悠々自適の隠居生活の真似事を

 しておりますよ。

 なに、大賢者なぞこれを除けば年寄りばっかりじゃからの。

 まとめる必要もありませんで。

 まして他の者たちは、どうもこの弟子には甘いようでの。」

「いや、他の方々からは、師匠が一番私に甘いともっぱらの評判なんですけれど。」


い、いいコンビだ、この二人。

ぼけ続ける爺ちゃんにさりげなく突っ込みを入れているカイっていうのも笑える。

それにしても、昨日も言ってたけど、本当に皆にハナタレ小僧扱いされてるんだなぁ。


「ところでヨール様。さっき気配っておっしゃいましたけど、私の、ですか?」

「おお、そうじゃ、お前さんに渡したい物がありましての。

 これの隣が私の部屋なんじゃが、ちょっと来てもらえるかの。

 なに、隣までじゃ、カイはここにいてええぞ。」

カイが眉をひそめて不機嫌そうな顔をしている。

「…何か変なことを絹花に吹き込むつもりじゃないでしょうね。」

それを聞いてヨール様は、これまたにっこり笑って答える。

「お前、師匠をちょっとは信用せんか。

 それともわしに話されて困るようなことを、今までの人生でしてきたのか?

 だったら今度酒でも飲んでいるときに、じっくり教えてもらわねばな。

 何、会話以外はお前にも感じられるようにしておいてやる。

 何かあったら飛んで来い。」


そこまで言い切られ、結局カイは付いて来られず、私はヨール様のお部屋に

一人でお邪魔することになった。

ヨール様の部屋は、カイの部屋とほとんど同じ作り、の筈だが、まるで感じが違った。

大きな植木鉢がたくさん置いてあって、もうちょっとでジャングル。

でも、うっそうとしてるって言うより、暖かい緑に包まれているような感じがする。

しかも、カイの部屋にあった小さな植木鉢が、なぜか同じ感じがする。

ここからもらわれていった子なのかな。


「木が多くて邪魔かの。

 わしの奥さんが樹の精霊の守護の生まれでの。

 死んでからどうも緑が近くにあった方が奥さんが近くにいるような気がしての。

 つい置いてしまうんじゃ。」

「いえ、とっても優しい感じがします。きっと奥様が近くにいらっしゃるんですね。」

ヨール様は、ちょっとうれしそうに、少し照れたような顔をした。

だめだ、爺ちゃんがどんなにすごい人なんだとしても、

今、ここでかわいい以外の感想がない…。


「その奥さんじゃがの。

 一年ほど前に亡くなったのじゃが、死ぬ間際にわしに頼みごとを申しましての。

 あるペンダントを預ってほしいというのじゃ。

 それはわしと一緒になる前から持っていたものでの、彼女の爺様からの預り物だと言って、

 自分ではつけたことがなかった。」


ヨール様の奥様のおじいさんからの預り物って、ずいぶん長い間預っていることになるのかしら。

それにしてもそんな大切なものの話を、何で私に。って、まさか。


「察しはいいようじゃの。その感覚、大事になされよ。

 わしが初めて見たのは奥さんが結婚してうちに引っ越してきた時じゃ。

 その時以外、見たこともなかった。

 そんな大切にしまいこんでいたペンダントをわしに渡しながら、

 そのペンダントを渡す者が現れるまで、もしくは自分がそれを預れなくなることがわかるまで、

 ペンダントのことは一切思い出さないだろう、と彼女は言った。」

それって、奥さんはもう自分では預かれないってわかったってこと?

…切ない…。


でも、ヨール様は何事もないように続ける。 

「その言葉どおり、今朝まですっかりペンダントのことは忘れておった。

 今日はわしは休みでの。

 家でお茶を淹れようと、お湯を沸かし始めたら、急に奥さんのこととペンダントのことを

 思い出したんじゃ。

 これは、渡すべき人が来たのじゃと思ったが、塔のイメージばかり現れる。

 それで、塔に向かったんじゃが、近づくに連れ、お前さんの気配がしての。

 ようやく全てが繋がった。というわけでの。」


ヨール様はよいしょ、と言いながら、器用に梯子を登り、

上の方の棚から大事そうに箱を取り出した。

それは深緑のビロードのような布張りの箱で、周りには銀の模様が付いている。

「これをお前さんに。もらってやってくれるかの。わしの奥さんからのプレゼントじゃ。」

そっと大切そうに箱を少しだけ撫でて、ヨール様は私にその箱を手渡してくれた。

私は、すでにちょっと泣いていた。

なんだか奥さんとのやり取りが切なくて。

「こんなに大切なもの、私がいただいていいんですか。」

「いいも何も、お前さんが塔を訪れる日に思い出したんじゃ。

 お前さんの他にこの塔にわしの知らないものはやってこない。

 エミールとそのお付のものなんぞいつでも来ておるしの。

 こっそり忍び込んだ神官共にも新顔はいないようじゃ。」

なんでそんなことまでわかるの?と聞きたかったけど、大賢者だからの、とか言われて

終わってしまいそうで、私には聞けなかった。

ついでに神官がこっそり忍び込むの?とか聞きたいし、

エミールさまへの大失敗とか思い出したけど、

いやいや、何より何より、こっち!


そっと箱を開けてみる。

中にはレモンのような鮮やかな黄色い石が付いた銀色のペンダントが入っている。

あまり飾り立てられているわけではないけれど、例えば賢者の白いローブにとても映えそうな

シンプルな作りだ。

何よりも。

「すごく綺麗な石。これはなんという石なんですか。」

「風の守護石でエオノーラというんじゃ。

 お前さんは風の加護を受けるもののようじゃから、きっと力になってくれる。

 よかったら、つけてみてくれんかの。」


「はい、ありがとうございます。すごくうれしいです。

 ところで、私が風の加護を受けているって、どうしてわかるんですか?」

話しながらそっと首にかけてみる。

なんだかあったかい感じがする。

にこにこうれしそうに笑ってくれるヨール様に、もう一度お礼を言おうとしたその時だった。

急に私はすごい風の力で、上の方に引っ張りあげられる。

上?

これの上って何にもなかった気がするんだけど?

しかも天井は???


「ヨール様っ!これっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ