『柳の切り株のプレスマン』
掲載日:2026/08/30
甲斐国に、樹齢千年は下らないという見事な柳の木がありました。この村には、大層美しい娘が住んでいて、柳の下で、若者と逢い引きを重ねていました。両親は、どこの若者なのか、娘に尋ねましたが、娘は知らないというのです。そんなことはあり得ないだろうと思いましたが、知らないと言うものを無理に問い詰めても仕方ありませんので、ちゃんと尋ねるように言いました。娘も、若者に、何者なのか、なぜいつも柳の木の下にいるのか尋ねましたが、そのとたん、若者は、さめざめと泣くのです。どうして泣くのかを尋ねますと、実は私はこの柳の木の精なのだ。お前が余りにも美しいので、このような姿になったのだ、などと言うのです。娘がもう一度、なぜ泣いているのか尋ねますと、今度、ある寺の境内の柱になることになったのだ、と言っているようでしたが、最後のほうはおえつで聞き取れませんでした。
柳の木は、切り倒され、寺まで運ばれるというとき、押しても引いても動かなくなりましたが、娘が柳の木に近寄って、何やらささやくと、うそのように軽くなって、立派な本堂の柱になったのでした。柳の木の切り株には、プレスマンが差され、いつしかひこばえとなったのでした。
教訓:巨木信仰は各地に見られる。信濃国などは、巨木の宝庫である。




