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【完結済】役場勤めの元冒険者は、白ギャル聖女に救われる  作者: 夕波@「不良債権」コミカライズアンソロ1/8発売


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07.

寄り道をしたものの、その後の旅程は順調だった。


あと1泊野宿になるが、そこから先は王都まで大きな村や町が続くので宿に困ることはなさそうだ。村から持たされた支度金にも余裕があるし、風呂付の宿を手配してもいいかもしれない。

そんなことを思いながら馬車を走らせていると、荷台からアサミ様がひょこりと顔をだした。


「ねぇヴァン。なんかへんなんだけど。」

アサミ様がへんなのはいつものことだと思ったが、俺は顔に出さずに「何が?」と答えた。


「さっきからすっげ足音きこえんの。馬?なんだろうこれ。」


俺は耳に魔力の流れを集中させてみた。確かに複数の足音がする。スピードからいっておそらくこの森でよく出る魔獣だろう。馬車を止めると、馬たちが逃げないよう太い木に手綱をきつく結んだ。


「おそらくフォレストウルフの群れだろう。中に隠れていてくれ。」


冒険者の端くれだったし、村にも時々迷いこんでくるから、魔獣の討伐には慣れている。

だが今回は傷ひとつつけてはならないお方を1人で守るのだ。1匹たりとも彼女に近づけるわけにはいかない。


俺は馬車から離れたところで剣を構えて、来襲に備えた。

やがて低い唸り声と、鋭い爪が地を蹴る音とともに群れが現れた。その数12頭。

とびかかってくるフォレストウルフを斬りながら、ボスを見極める。ひときわ体の大きな、若くはない個体にじりじりと距離を詰めていく。


人間を襲いなれているのだろう。2頭が俺の脇をすりぬけて、幌馬車めがけて走り出した。俺はナイフを取り出すと瞬次に放った。

甲高い声と共にドサリと2頭が重なり合うようにして倒れたのを確認して、一気にボスへと距離を詰める。


ジリ…フォレストウルフたちが1歩後退した。まだ若い一匹が、後先構わず俺に突っ込んできた。それをひと振りで斬り捨て、他を警戒しながらボスから絶対に目を離さない。

やがて戦ったところで益は少ないと判断したのだろう。フォレストウルフの群れは静かに森の奥へと消えていった。2匹の絶命を確認すると、俺はアサミ様にもう大丈夫だと声をかけた。


「大丈夫?」

「問題ない。」

「良かった~っていうかヴァン超強くない?」


そう言って笑うアサミ様は小さく震えていた。森で魔獣に襲われる経験なんてしたことがないのだろう。


「無理して笑わなくていい。俺は大丈夫だ。命にかえてもあんたを守る。」

「…それは、私が聖女ってやつだから?」


俺は少し考えた。確かに聖女だと認識してはいるが、出会った時から、アサミ様はアサミ様だった。

だがそれを伝えて何になる?彼女に必要なのは、自分が聖女という絶対に守られる立場だという安心感だろう。


「ああ、そうだ。」

「…そっかー。ありがとね。でも命は大事にしてよ。」

アサミ様はやはり恐ろしかったのか、浮かない顔をしていた。


ここでのんびりしている暇はなかった。血の臭いを嗅ぎつけて他の魔獣がやってきかねない。

俺はナイフで腹を裂くと魔石を取り出してから、火魔法で死んだフォレストウルフを焼いた。


これだけの騒ぎがあったのに、馬たちはひどく落ち着いていた。

聖女の力が影響しているのだろうとしか思えなかった。おかげで馬車をすぐに出すことができた。


魔石はなかなかの大きさだった。用された路銀に上乗せすれば、王都までそれなりの宿を手配することができるはず。血と脂を拭い取った魔石を光にかざし、いくらで売れるか算段していると、アサミ様が荷台から抜け出してきて俺の隣に座った。


「落ち着いたか?」

「うん。なんか嬉しそうだね。」

「ああ。このサイズの魔石は久しぶりだからな。」


売りに出す時の、素材屋との駆け引きを思い出して胸が躍る。

この感覚があったからどんなにキツくて安定しなくても冒険者を続けていたんだと、懐かしさで少し泣きそうになった。馬車は森を抜け、街道にさしかかった。

ここをまっすぐまっすぐ行けば、王都まであと少しだ。


「さっき、なんで全部殺さなかったの?」

そう尋ねるアサミ様に非難の色はない。ただ純粋に知りたいという子どものようだった。


「今はあんたを無事に王都に送り届けることが最優先だ。他に護衛がいない状態で全部狩るのはリスクが大きい。仕留めきれなかった個体に他の群れを呼ばれても厄介だからな。ボスも馬鹿じゃない。ここで退けば他は助かると見込めば追ってこない。」


獣は無駄な争いをしない。絶えず争っているのは人間だけだと、そんなことを考えた。


「そっか。ヴァンってやっぱ冒険者なんだね。」

「元、な。」

「そんなことないっしょ。今めっちゃいい顔してるよ。」

俺はアサミ様に言われて、そういえばこんな状況なのに心が軽いことに気付いた。


村役場で働いていれば、俺は永遠の雑用係で、決して認めてもらえないが給料だけは毎月安定していた。命の危険にさらされることも、何日も野宿で夜通し働くこともない。なのに、どうしてこんなにも息苦しいのか。

これ以上考えたくなくて、アサミ様の顔をじっと見た。


「アンタは、いつもいい顔してるな。」

「ギャルマインドマジ最強っしょ。」


また理解不能な単語がでてきたが、彼女が最強なのにはおおむね同意だった。

7話くらいで終わりますと言いながら全然終わりませんねこれ…すみません。

もう少しだけこの二人にお付き合いいただければ幸いです。


もしよければ、☆評価ボタンやブックマークに追加していただけるととても嬉しいです。

最後までどうぞよろしくお願いいたします。

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