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【完結済】役場勤めの元冒険者は、白ギャル聖女に救われる  作者: 夕波@「不良債権」コミカライズアンソロ1/8発売


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02.

「村長、これは一体…。」

「おお、エステヴァン。やっと来たか。こちらは今日の明け方に森にいらした聖女様じゃ。木こりが怪しい光が見えたと言うんで様子を見にくと、御身が切り株に腰をかけて休まれていたということじゃ。」

村長はめずらしく上機嫌で俺に話しかけてきた。こういう顔をするときは、たいていろくな目に合わないのだと身構える。

5人の聖女が召喚されたと聞いていたが、まさかこの村にいたなんて。誰もがそう思っただろう。村長は長いあごひげを撫でながら続けた。


「エステヴァン。お前この聖女様を護衛して王都まで連れていってくれんか。」

「はぁっ!?」

「その…少々特殊な聖女様での。元冒険者のお前が適任じゃろう。」


重役たちの表情から、彼らが聖女を持て余していることが伝わってきた。

そりゃそうだろう。王都どころか領地の外へ出た事のない者がほとんどで、恐れ多くも聖女を国王のもとへ届けるなんて大仕事をやってのけられそうなものはこの村に俺しかいなかった。

逆に言えば、もし失敗しても責任をすべて押し付けられる手ごろな人間ということになる。


こんな大きな案件は領主に判断を仰げばいいと思うのだが、それでは手柄を横取りされてしまうと考えたのだろう。

どうするべきか…。考えていると、目の前に座っている聖女が盛大なため息をついた。


「だからさぁ、さっきから何度も違うって言ってるじゃん。仮にここが異世界?だったとしても私が聖女なわけねぇし、ギャルだし。まぁ白か黒かでいったら白ギャルだから、ギリ聖女みあるかもしれないけど。…いや、ギリでもねぇわな。護衛って何?いきなり知らない場所に飛ばされてマジ死ぬんだけど。」


少ししゃげれていて、はきはき喋る。見た目との相違が意外だったが、その声は聞き取りやすかった。

彼女の言動から、話が通じないことへの苛立ちが感じられた。

村の老人に好き勝手言われてしんどい思いをする気持ちはわかる。少し彼女が不憫に思えてきて、俺は村長に目くばせすると、彼女の前に出て跪いた。


「恐れながら、発言を許可していただいてもよろしいでしょうか。」

彼女は大きな目でぱちぱちとまばたきした後、豪快に笑った。

「恐れなくていいし好きに喋ったらいいじゃん。」


「ありがとうございます。私はこの村役場で参事をつとめているエステヴァン・ギャレットと申します。まずはあなた様が聖女ではないとのことで、なんとお呼びしたら良いものかと。お名前を伺ってもよろしいでしょうか。」


「あー、そうだよね。私は宍倉愛咲美。サミって呼んでよ。」

「恐れ入ります。では、以降アサミ様と呼ばせていただきます。」

「堅過ぎかっ!サミでいいよ。」

その笑顔には、やっと話の通じる相手がきたという安心が見えた。


「夜明けに森にいらっしゃったと言うことですが、もしお食事をとられていないようでしたら何かお持ちしますが。」


「えー、食べたいっ!めちゃお腹すいてたんだよね。お兄さん来てくれてマジ助かったー。神すぎるっ!」

俺は部屋の隅に控えていたトマを見た。


「トマ、かるがも亭へ行ってスープと、なにかすぐ食べられるものをもらってきてくれないか?支払いは役場につけてもらって。」

「おう!」


俺は部屋の壁にずらりと並んだ重役たちを見まわした。こんなに大勢に囲まれてはさぞ息苦しいだろう。


「申し訳ありませんが皆さん退出を願えますか?少し落ち着いて話がしたいので。ドアは開けておき、なにかあればすぐに呼びますので。」

いつもは俺を軽んじる重役たちも、よほど彼女を持て余したとみえて、すんなり部屋を出て行った。


「私のもので申し訳ありませんが、ひとまずこれを羽織ってください。」

俺は自分のジャケットを脱ぐと彼女の肩にかけた。それからひざ掛けも持ってきて彼女の足元が見えないようにふわりとかけた。


「ありがとう~。めちゃ紳士。えーと、ごめん。お兄さん名前なんだっけ…。」

「エステヴァン・ギャレットと申します。」

「エステヴァン…長っ!。ヴァンって呼んでもいい?」

「かまいません。」


何をどうしたらこんなに高貴な見た目にこの喋り方がつくのだろうか。

腹の底から疑問で仕方がなかったが、少なくともアサミ様の言葉に人を見下したり嘘はない。俺は久しぶりにまともな人間と会話ができて、呼吸が楽になった気がした。


アサミ様はスープもパンもよく食べて、ものすごい勢いで喋った。

詳しく話を聞くと、ある日カフェなる場所を出た瞬間に足元が光って、気が付いたら夜明けの森にいたらしい。


「なんでか知らないけどバッグもないし、マジで意味わかんない。スマホ失くすとかほんとへこむしさぁ。」


よくわからないが、彼女にとってこの世界に来たことよりもスマホというものを紛失したことのほうがショックなようだった。


「ねぇ、これ元の世界に帰れると思う?」

「それは…私の判断ではなんとも。まずは王都にいってアサミ様を召喚した者に話を聞きましょう。他に召喚された方もいらっしゃるはずです。」


「帰れない系かぁ~。まあ、うち毒親だし元カレもしつこいし、バ先のクソ店長は手ェだしてこようとするしで色々うんざりしてたんだよね。だから最悪帰れなくてもいいんだけどさ…。ねっ、王都にいけば仕事とかあるかな?できればブラックじゃないやつで。」


「アサミ様は正式に聖女認定されると思います。そうなれば、国により保護対象となりますので働く必要はないかと。」

「マジで?よっしゃ秒で行こっ!で、王都って遠い?」


「そうですね。ここから馬で2週間ほどかと。」

「うーまー!SDGSすぎん!?いや…まあ異世界だからそらそうよな。」


俺にはもう、アサミ様の言ってることの半分も分からなかったが、それでも話していて嫌な気持ちにはならなかった。

かなり独特な話ぶりではあったけれど、俺を対等に扱ってくれる人間に久しぶりに会った。

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