◆ツクヨミ編 ~女神の返答、そして勝利の在処~
執務室で、俺は机に突っ伏していた。
何度呼びかけても、あの女神からの応答はない。ゴーレム一号が、心なしか心配そうに俺を見下ろしているような気さえする。
(くそっ、やっぱり無視か…)
俺が、諦めて顔を上げようとした、その時だった。
目の前の空間に、ぽつり、と文字が浮かび上がった。
『う』
ゆっくりと、次が続く。
『る』
『さ』
『い』
『のぅ』
「――やっと来たか、この引きこもりクソ女神がっ!!」
俺は、椅子から跳ね起き、空間に向かって叫んだ。
『なんじゃ、人間。騒々しいのぅ。われは今、大事なイベントの最中なのじゃ。くだらんことで、われの集中を乱すでない』
「くだらなくないから呼んでるんだろうが!お前、一番肝心なことを、俺に伝え忘れてるだろ!」
『はて?なんのことじゃろうのう?』
俺は、一気にまくしたてた。
「このゲームの、勝利条件だ!どうすれば、俺の…いや、俺たちの『勝ち』になるんだ!?それを教えろ!」
しばらくの沈黙。
やれやれ、とでも言うように、億劫そうな文字が浮かぶ。
『…そんなこと、今更どうでもよかろう。そちは、存外うまくやっておる。もう勝ったも同然じゃ(ほほほ)』
「大ありだ!俺がいくら国を豊かにしても、勝利条件が『他の神の国を滅ぼした数』だったら、全くの無意味だろうが!目的が分からんから、勝ちを目指せないだろっ!!」
俺の、至極もっともな訴えに、ツクヨミも、ようやく、少しだけ思考を巡らせたようだった。
やや長い沈黙の後、思い出したかのように、文字が紡がれる。
『…そういえば、最初にアマテラス姉様が、高らかに宣言しておったような気もするのぅ…』
『なんじゃったか…。一番、国を…豊かにした神が勝ち、とか、そのような感じじゃったはずじゃが…』
俺は、固唾をのんで、次の言葉を待った。
そして、ツクヨミは、ついに、その「答え」を、思い出した。
『おお、そうじゃ!思い出したぞ!』
『最も発展させ豊かにした神の勝ちじゃ』
「最も豊かに?」
あまりにも、曖昧な勝利条件。
俺は、すぐさま問い返した。
「おい、待て!その『豊かに』ってのは、どうやって測るんだ!?民の満足度か?人口増加率か?具体的な指標を教えろ!」
だが、俺の問いかけに、ツクヨミは、実に、彼女らしい一言を、無慈悲に、そして素早く返してきた。
『知らぬ』
『ではな』
その文字を最後に、ツクヨミの気配は、完全に消え去った。
執務室には、静寂と、そして、新たな、より厄介な謎を抱えてしまった俺だけが、残された。
「……。」
俺は、再び、机に突っ伏した。
(がくっ)




