◆ツクヨミ編 ~王の自覚、そして神への問い~
もうすぐですね、最終章まで
執務室の窓から差し込む月明かりが、机に広げられた地図を白く照らしている。
俺は、椅子に深く身を預け、静かにその地図を眺めていた。
エルフの国にはゴウダを。獣人の国にはズリを。
俺の意を汲んだ駒たちが、それぞれの場所で、静かに、しかし確実に動き始めている。
内政も安定し、民の顔にも活気が戻った。就任当初の、崩壊寸前だった国が嘘のようだ。
(ふう…これでようやく、落ち着いて次の手を考えられる)
俺は、知らず知らずのうちに浮かべていた安堵の息を、ゆっくりと吐き出した。
そうだ、次の手だ。
この国をさらに豊かにし、民の安全を確固たるものにする。そして、この理不尽なゲームに「勝利」する、そのための次の一手を。
「勝利、か…」
ふと、口から漏れたその言葉に、俺の思考が、ぴたりと止まった。
脳裏に、あの時の、うんざりするような記憶が蘇る。
漆黒の空間で、無機質な文字を飛ばしてきた、あの面倒くさがりな女神との、最初の会話。
『そちにとある国を任せてやろうという話じゃ』
『これはゲームという名の勝負なのじゃ。勝たねばならぬ』
そうだ、アイツはそう言った。
だが、待て。
勝利条件は?
このゲームの、「勝ち」の定義は、一体なんだ?
俺は、記憶の糸を必死に手繰り寄せる。
国の発展度か?領土の広さか?それとも、他の神の国を滅ぼすことか?
実は、神々がどこかに隠した秘宝を見つけるとか、はないか。あれがそんな労力を使うとは思えんな。
いくら記憶を探っても、答えは見つからない。思い出すのは、ただ「興味ないのじゃ」「飽きたのじゃ」という、あの女神の、あまりにも無責任な言葉だけだ。
思えば、アイツのペースに乗せられて有耶無耶のまま、転送された記憶しかない。
ドンッ!!
俺は、思わず机に拳を叩きつけていた。
傍らに控えていたゴーレム一号が、驚いたように、わずかに身じろぎをする。
「…あの引きこもり女神…!!」
込み上げてくるのは、呆れを通り越した、純粋な怒り。
俺は、今まで、ルールすら知らされないまま、この命懸けの盤上で放り込まれていたのだ。
「くっそぉーっ!!」
俺は、誰もいないはずの空間に向かって、静かに、しかし、腹の底からの声で、呼びかけた。
「おいっ!!ツクヨミっ、いるんだろ!返事してくれ!!」
返事がない。
「おーい、このクソ女神っ!!返事しろ、こらっ!!」
俺はやっと、このゲームの勝利に向けて動き出す、…、その前の準備に取り掛かるのだった。
(がくっ)




