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三柱ゲーム  作者: さらん


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◆アマテラス編 ~賢者の慧眼、そして新たな誓い~

エルフの国の、神木しんぼくの中にある議会場。

その空気は、カイとソラからの、あまりにも衝撃的な報告によって、鉛のように、重く、沈んでいた。


誰もが、言葉を失い、ただ、うなだれている。

その、重苦しい沈黙を、破ったのは、長老ロランの、静かな、しかし、凛と響く声だった。


「…カイ殿、ソラ殿。その、人間の王は、我らに、何か、具体的な『要求』を、してきたかな?例えば、土地の割譲や、金銀財宝の献上、あるいは、人質の提出、など」


その、あまりにも場違いな、事務的な問いかけに、カイは、戸惑いながらも、答えた。


「…いえ。そのような、要求は、一切。ただ、我らを『庇護下』に置くと、それだけを…」

「ふむ。では、彼は、あなた方に、剣を向けたか?我らの同胞の、命を、奪うと、脅したかな?」

「それも、ありません。むしろ、我らの安全は、保証すると…」


ロランは、静かに、頷いた。

そして、ゆっくりと、議会場の、全ての者を見渡した。


「では、皆の者に問おう。我らは、一体、何が『負けた』のだ?」


その、あまりにも根源的な問いに、誰もが、はっとしたように、顔を上げた。


「我らは、土地も、富も、そして、一人の同胞の命すらも、失ってはいない。それどころか、我らエルフの安寧を約束されておる。我らが失ったのは、ただ一つ。あの、恐るべき王との、交渉の席で、我らの代表が、その**『心の平静さ』**を、完全に、失ってしまった。…ただ、それだけのことではないかな?」


彼は、そこで、一度、言葉を切った。

そして、その視線を、カイとソラへと、優しく、注いだ。


「カイ殿、ソラ殿。決して、お二人を、責めているのではない。むしろ、逆だ」


彼は、ゆっくりと、立ち上がると、二人の前に進み出て、その、老いた身を、深く、深く、折り曲げた。


「――よくぞ、ご無事で、帰られた。そして、あの、怪物の前で、我らが民の、平和と、未来を、守り抜いてくださった。この、老いぼれの、浅はかな策で、お二人を、地獄の番人の前に、送り出してしまったこと、心より、お詫び申し上げる」


その、長老からの、あまりにも真摯な、謝罪と、そして、労いの言葉。


カイとソラの瞳から、張り詰めていたものが、解けるように、一筋の、熱い涙が、こぼれ落ちた。


「勝てませぬな。かの王には、我らの誰が行ったところで、勝てはしなかったであろう。かの王は、我々の、などという矮小なものではなく、その遥か上、この世界、全ての理を、見通しているようだ。我々は、彼と『戦う』必要などない。それ以上に、かの王は我らを敵とすら見ておらん。我らの進むべき道は、かの王の下にある。戦おうとする意味すら、全く存在しない」


その、ロランの、力強い言葉に、議会場の、全ての者が、顔を上げた。

彼らの顔に、もはや、絶望の色はない。


敗北などではなかった。

そもそも、立っている位階から違うのだ。


エルフの国は、この日、一人の、恐るべき王によって、一度、完全に、心を砕かれた。


そして、砕け散った誇りの欠片を拾い集め、新たな、より強かな「団結」という名の、武器を手に入れたのである。


彼らの、人間の王の下で得られる安寧という、大きな財産を手に入れた。


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