表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三柱ゲーム  作者: さらん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/102

◆スサノオ編 ~凶報の帰還~

あの日、あのこの世のものとは思えぬ恐怖を味わい、人間の王の城から解放されたミスラは、すぐに行動を開始した。


彼女は、潜伏していた仲間の一人に、エルフたちの監視継続を命じると、自らは、己の足で、獣人の国への帰路についた。


この、国の存亡を揺るがしかねない凶報は、誰かの口を介してではなく、自分自身が、直接、賢者ズリ様に伝えなければならない。


数日後。

獣王城、賢者ズリの執務室の扉が、控えめにノックされた。


「…入れ」


入ってきたのは、旅の汚れにやつれ、しかし、その瞳に、かつてないほどの緊張と、切迫した光を宿した、諜報部隊長ミスラ、その人だった。


彼女は、主であるズリの前に進み出ると、恭しく頭を下げる。


「ミスラよ、息災であったか。だが、その様子…ただごとでは、なさそうだな」

「ズリ様、火急のご報告がございます。」


ミスラは、自らを落ち着かせるように、一息ついた後、ゆっくりと続ける。


「人間の王は、我々の想像を、遥かに超え、この世の全てを把握しておるかのようでした」


ズリは、静かに、彼女に椅子を勧めた。そして、自らも、机を挟んで、彼女の向かいに座る。


「…聞こう」


ミスラは、あの日、あの謁見の間で起きた、全ての出来事を、語り始める。


エルフの国の長である、カイとソラの登場。

彼らの、あまりにも稚拙な「偽装」工作。

そして、その全てを、まるで、盤上の駒の動きでも読むかのように、完璧に見抜き、弄び、そして、絶望の淵へと叩き落とした、あの、恐るべき人間の王、「俺」の、言葉と、行動の、全てを。


彼女の報告を聞き終えた時、賢者ズリの顔からは、表情というものが、完全に消え失せた。


「…そうか。全ては、かの王の掌の上だった、というわけか」

「はい。そして、かの王は、最後に、ズリ様と、ライ陛下への『ご伝言』を…」


ミスラは、人間の王の、あの愉悦に満ちた顔を思い出しながら、震える声で、その、あまりにも傲慢で、そして、屈辱的な「最後通牒」を、その後に告げられたズリへの伝言も、一字一句、正確にズリに告げた。


全てを聞き終えたズリは、しばらくの間、何も言えなかった。

ただ、目を閉じ、じっと、何かを考えている。

やがて、彼が、ゆっくりと目を開けた時、その瞳には、もはや、恐怖も、絶望もなかった。


そこにあったのは、氷のように冷たく、そして、底の知れない、静かな、静かな**「覚悟」**の光だった。


「…分かった、ミスラ。大儀であった。下がって、ゆっくりと休むがいい」

「ズリ様…」

「お前の報告で、全てが、繋がった。そして、我らが、次に為すべきことも、な」


賢者ズリは、静かに立ち上がると、窓の外に広がる、自らの国を見つめた。

彼の小さな背中が、今、この国の、全ての運命を、一人で背負っているように、ミスラの目には、見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ