◆ツクヨ-ミ編 ~勝者の条件、敗者の選択~
笑みを浮かべたまま俺は、凍りついている四人の顔を、一人、一人、ゆっくりと見渡した。
恐怖に耐える、カイとソラ。
絶望に、もはや表情すら失っている、リーフ。
そして、床に膝をついたまま、ただ、空虚な目でこちらを見つめる、ミスラ。
(なにをそこまでビビる必要があるというのか。まあ、そこを利用させてもらうのだがな)
俺は再び、玉座に深く腰を下ろした。
「さて、と。いつまでも、そう青い顔をされたままでは、話が進まんな。…俺は、お前たちと、戦争がしたいわけではない」
その、あまりにも意外な一言に、四人の肩が、わずかに揺れる。
「俺の目的は、ただ一つ。この国を、俺の民を、豊かにし、平和に、安全に、暮らさせるようにすることだ。だが、お前たちの存在は、その邪魔になる」
俺は、まず、カイたちエルフの方へと、視線を向けた。
「カイ殿、ソラ殿。お前たちの、その『偽りの旅』、大儀だったな。だが、その茶番は、もう終わりだ。お前たちの前には、二つの道が俺には見える」
俺は、指を一本、立てた。
「1つ目の道、それは、今すぐ、この国を立ち去ることだ。俺は、それを止めんし、邪魔もしない。だが、その場合、この国に残っている、リーフ殿をはじめとする、お前たちの同胞たちは、俺の国の『人質』として、丁重に、保護させてもらう。彼らが、どうなるかは、お前たちの、今後の出方次第だ」
カイとソラの顔が、絶望に染まるが、俺には関係ない。
構わず、二本目の指を立てた。
「そして、もう一つの道。それは、俺と『国交』を結ぶことだ。もちろん、対等な、などという、甘いものなのではないぞ。お前たちは、俺の国の、庇護下に入る。その代わり、俺は、お前たちの国の安全と、この国にいる、お前たちの同胞たちの安全を、完全に、保証してやる。…どちらを選ぶかはお前たち次第だ。だがまあ、賢いお前たちなら、どうするべきかは、とっくに理解できているだろう」
俺は不敵な笑みを見せつける。
そして、次に、ミスラへと、向き直る。
「さて、蛇の美人さん。お前にも、仕事をやろう。お前では、重要な結論などくだせまい」
「……。」
「お前の主君、獣王ライと、賢者ズリに、俺からの『伝言』を、一字一句、正確に伝えること、それがミスラ、お前の仕事だ」
俺は、楽しそうに、目を細めた。
「『お前たちの、その陳腐な征服計画を、俺は全て掴んでいる。本気でコトを構えたいなら、受けて立とう。構わん、何時でも全力でかかってこい。だが俺はそう、実はとても優しい心根を持っている。だから、お前たちに、一度だけ、チャンスを与えてやろう。お前たちも、オレたち人間とエルフとの交流を望むのなら、正式な『使者』を、この俺の元へ送って来ることだ。もし、その度胸がないのなら、まあ、好きにする事だな。但し、俺の国にちょっかいを出す気ならその時こそ、二度と、俺の国を思い出すことすらなくなるようにしてやる。覚悟しておくことだ』…とな」
国交樹立の提案をする気など、さらさらない。
「対等に話してやるから、さっさと表舞台に出てこい」という、当たり前の、最後通牒だった。
「さあ、どうする? お前たちは、俺と、どんな『お付き合い』を望む?」
彼らが、どんな答えを出そうとも、もはや、このゲームの主導権は、完全に、この俺の手の中にある。




