◆ツクヨミ編 ~王の揺さぶり、賢者の沈黙~
謁見の間に、凍りつくような沈黙が落ちる。賢者リーフの額に、一筋の冷たい汗が伝うのが見える。
そして彼が、何かを言い訳しようと、口を開きかけた瞬間。
「――いや、まあいい」
俺は、その言葉を、あっさりと遮った。
「この話は、もっとゆっくりと詰めていけばよかったな。慌てることはなかった。いや、悪かった悪かった」
軽い口調で自らの問いかけをなかったことにした。
そして、口を開きかけたリーフを俺は軽く見やる。思った通り、リーフは戸惑いの表情で閉じる。彼の顔には「一体、何が起きているのだ?」という、隠しきれない困惑の色が浮かんでいた。
(今回は、この程度でいいだろう。どうせ、こちらのことは、本国に報告しているはずだ、リーフも賢者なのだからな。すぐに本国からリーフに接触もある。なにより、放っておいても向こうからこちらに会いに来るしかないはずだ。その時が楽しみに待てばいい。くくく)
俺は、何事もなかったかのように、彼の提出した報告書を、ポンと手で叩いた。
「そうだな。俺も、まずこちらの報告書を、じっくりと吟味するとしよう」
そして、俺は玉座から、賢者リーフの目を、真っ直ぐに見据える。
「次回こそは、もっと**『面白い話』**を、聞かせてもらえるのだろうな?」
リーフは、もはや何も答えることができず、ただ、深く、深く、頭を下げることしかできない。
こうして、賢者リーフとの、二度目の会談は終わった。
この後、彼らが自らの「偽装」という嘘の重みに、どれだけ苦しむことになるのかを俺は1人静かに想像してみる。
(にやり)
自然と笑みが浮かぶ。
「リーフの周辺から目を離すな。だが、絶対に気取られるな、絶対にな。」
「御意!!」
敢えて、天井付近で密かに聞いている者にも、聞こえるように、俺はハッキリと命令を下した。




