◆アマテラス編 ~遠き地の同胞~
エルフとドワーフとの国交樹立が成立してから約5年の歳月が流れた。
ドワーフの国に隣接する、エルフたちの開拓村。そこでは、穏やかだが、確かな変化が起きていた。ドワーフの技術で作られた堅牢な家々が立ち並び、エルフたちは鋼の農具を手に、効率よく畑を耕している。
そして、彼らを率いるのは、本国からカイが全幅の信頼を置いて派遣した、賢者リーフである。
その日、遠く離れたエルフのリーダーであるカイの元に、リーフからの定期報告が届けられた。
丁寧に鞣された獣の皮に、エルフ独特の流麗な文字が綴られている。
カイは、執務室でソラと共に、その報告書に目を通していた。
「ソラ、リーフからの報告が届いているよ。ドワーフたちが、我々の教えた『魔法の理論』を応用し、自己発熱する坩堝の試作に成功したらしい。彼らの技術への探求心は、凄まじいな」
「ええ…。喜ばしいことだけれど、少し怖くもあるわね。彼らは、私たちが想像するよりも、ずっと早く、力の核心に近づいてしまうかもしれない」
「リーフも同じように警戒しているようだ。報告書にも、ドワーフの技術者たちの熱意と、時折見せる執念について、詳しく書かれている。…だが、今のところ、ドワーフ王は約束を守り、我々の根幹を探るような動きは見せていないらしい。もう少しドワーフ王を信用してみよう」
カイは、報告書の別の箇所を指差した。
「こちらの暮らし向きは、上々のようだ。リーフの采配のおかげで、ドワーフたちとの関係も良好だし、彼らの道具のおかげで、村の生活は格段に豊かになった、とある」
「リーフに任せて、本当に良かったわね。彼のような賢明で、慎重なリーダーでなければ、きっと難しかったでしょう」
「ああ、全くだ。彼だからこそ、この難しい任務を任せられた」
カイは、執務室の壁に掛けられた大きな地図に目をやった。ドワーフの国の隣に、小さく、しかし確かに存在する、エルフの開拓村。
それは、二人が未来のために下した、大きな決断の証だった。
「…リーフたちのためにも、我々はこの国を、もっと豊かにしないとね」
「そうね、ドワーフ王国との国交樹立を勧めて下さった長老にも感謝だわ」
「ソラ、そこはアマテラス様に、だよ」
分かっていて、敢えて指摘するカイだった。




