◆ツクヨミ編~策謀の応酬と真の意図~
俺はゴーレム一号と家臣たちを率い、新たな通路へと足を踏み入れた。ドワーフ王の悪趣味な罠に散々苦しめられた経験は、俺に確かな洞察力と、予測不能な対応力を与えていた。
その後の探索は、驚くほど順調に進んだ。
「ゴーレム、右の壁に微細な空気の揺らぎあり。罠の可能性を排除できない」
俺の指示に、ゴーレム一号は的確に罠を探知し、その構造を報告する。ドワーフ王の仕掛けたパンチや落とし穴、酢のお茶といった物理的な罠は、全てゴーレムによって回避された。
心理的な揺さぶりも、俺の冷静な指示と、**「どうせまた何か仕掛けてくる」**という疑心暗鬼が逆説的に働き、罠として機能しなかった。
そして、次々と見つかるゴーレムたち。
「わ、私の…可愛いゴーレム…愛してるッ!!」
「あなたなしでは生きられない、私の素敵なゴーレム様」
「この愛は永遠…私の崇高なるゴーレム、最高ッ!!」
回を追うごとに、合言葉はどんどん羞恥心を煽るものへとエスカレートしていった。家臣たちのひきつった笑いや、ゴーレムたちの淡々とした認証音声が部屋に響くたび、俺は地面にめり込みたい気持ちになった。
だが、不思議なことに、最初に感じたような絶望的な屈辱感は薄れていた。
むしろ、**「ここまで来たからには、最後までやり切ってやる!」**という、ある種の開き直りにも似た清々しさが芽生えていた。
ドワーフ王の狙いが俺を精神的に追い詰めることにあるのなら、もはやその策略は効かない。羞恥を乗り越えるたびに、一台また一台とゴーレムが増えていく。二号機は探索能力に特化し、三号機は戦闘能力に優れるなど、それぞれ異なる特性を持つゴーレムたちが俺の配下についていく。
彼らが加わることで、探索はますます効率的になり、残りのゴーレムはあっという間に見つかっていった。
そして、全てのゴーレムを見つけ終え、最後の合言葉を叫び終えたその瞬間。
部屋全体が、以前にも増して眩い光に包まれた。
光が収まると、部屋の中央に、見慣れたずんぐりとした小人、ドワーフ王の「記憶」が立っていた。
『よくやった、次の王よ!』
ドワーフ王は、心底嬉しそうな顔で、まるで最初から全てを見ていたかのように俺に語りかけた。
『素晴らしい快進撃でしたね!最初の部屋でのあの愚図な動きが嘘のようです!まさか、私の仕掛けた罠の数々を、そのような冷静な判断力と、そして何よりも鋼の精神力で乗り越えてくるとは!』
ドワーフ王の言葉は、まるで俺が休眠から覚醒し、見事に彼の期待に応えたかのように響く。
『全てのゴーレムを見つけ、そして私に残された最後の試練すらも突破した。これらは全て、キミが真の王としてこの国を導くための、必要な試練であったのさ!』
ドワーフ王は満足げに頷く。
『さあ、これで私の役目は終わりです。この国と、私の愛するゴーレムたち、そして全ての住人たちを、そちの赴くままに導きたまえ。』
そう言い終えると、ドワーフ王の「記憶」は、満面の笑みを浮かべたまま、ゆっくりと光の粒子となって消えていった。
静まり返る部屋の中で、俺は、これまで散々振り回された悪趣味なジジイからの、まさかの「お褒めの言葉」に呆然と立ち尽くした。
(くっそー、結局、最後までアイツの掌の上だったってのか!?)
やられた感は半端ない。だが、これまでの苦労が、不思議と悔しさよりも、胸の奥から湧き上がる達成感が勝る。全てのゴーレムが俺の命令を待つように静かに佇んでいる。
俺は、深々と息を吸い込み、そして、これまでの全てを肯定するように、高らかに宣言した。
「よし、行くぞ!次からは、俺がこの国を動かす番だ!!」
こうして、ドワーフ王の悪趣味な「おもてなし」と、それに翻弄され続けた俺のゴーレム探索の旅は、清々しい幕を下ろした。




