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三柱ゲーム  作者: さらん


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39/102

◆アマテラス編~カイの決断~

村で最も巨大な神木しんぼくの、大きく広がった根がそのまま壁となっている大空洞。

そこがエルフたちの議会場だった。

中央にはカイとソラ、そして彼らを囲むように、村の各部族の長や重鎮たちが席についている。100年の平和な統治を経て、カイの言葉には指導者としての重みが備わっていた。


議会場の厳粛な空気の中、カイは静かに立ち上がった。


「皆、聞いてほしい。今日は、我々の国の次の100年に関わる重要な提案がある」


カイは、アマテラスからの神託について、民に伝えられる範囲で慎重に言葉を選んだ。


「先日、女神アマテラス様よりお言葉を賜った。我々の平和な暮らしぶりにご満悦である、と。しかし、同時に、この平和を永続させるためには、内に籠るだけでなく、外の世界との交流も必要ではないか、とのご意向も示された」


彼はそこで一度言葉を切り、議会の顔ぶれを見渡した。


「私自身も、常々考えていたことだ。我々の村は豊かになった。だが、この森の中だけですべてが完結するわけではない。新たな知識、新たな文化、そして新たな交易。それらなくして、未来の発展はない。そこで、私は東の山々に住むという『ドワーフ』の民との接触を試みたいと考えている」


その言葉に、議会場がざわめいた。ドワーフの名は、伝説やおとぎ話でしか知らない者がほとんどだ。


カイは、その動揺を鎮めるように、具体的な計画を語り始めた。


「もちろん、無謀なことをするつもりはない。私の計画は三段階に分かれている。

第一段階として、まずは外交使節団を送りたい。屈強な戦士と、聡明な知識人からなる少数の使節団だ。彼らの目的は、ドワーフの国が本当に存在するのか、彼らが友好的な民なのかを確認し、もし可能であれば、国交を結ぶための下地を作ることにある」

「第二段階は、国交が結べた場合だ。交易のための小さな前線基地、あるいは開拓村を、彼らの国の近くに、もちろん許可を得て作らせてもらう。最初は、100人にも満たないパイオニアとなろう」

「そして最終段階だ。その開拓村が軌道に乗り、安全が確保され、ドワーフとの間に確かな信頼が生まれた時、初めて希望者を募っての本格的な移住を考える。女神様が示された2000という数字は、おそらく、それくらいの規模の交流があって初めて、我々の国が次の段階へ進めるという、最終目標なのだろう」


カイの現実的で段階的な計画に、先ほどまでのざわめきは落ち着き、皆が真剣な表情で聞き入っていた。


しかし、古き森の守り手であるロランが、静かに口を開いた。


「カイ殿。計画が慎重なものであることは理解した。だが、第一段階、その最初の使節団が最も危険ではないかな? 我々はドワーフについて何も知らぬ。彼らが、我々を歓迎するとは限らない。もし、使節団が攻撃されたらどうする? それが、二つの種族の埋められぬ亀裂、取り返しのつかぬ戦争の火種になるやもしれんのだぞ」


ロランの指摘は的を射ていた。最も大きなリスクは、最初の接触にある。

議会の空気は、再び慎重論に傾きかけた。


だが、そこでカイは、穏やかに、しかし力強く答えた。


「ロラン殿。おっしゃる通り、リスクはあります。ですが、そのリスクを恐れて何もしなければ、我々は未来永劫、この森から出ることはできない。それに、使節団には、私が行きます」

「なっ…!」


カイの言葉に、ソラを含め、議会の全員が息を呑んだ。


「国の代表である私が、長として自ら赴き、礼を尽くして交渉する。それが、我々の平和を望む意志を伝える、最も誠実な方法だと信じている。それでもなお、彼らが敵意を向けるのであれば…その時は、また改めてここで方策を考えればいい」


一国の王が、自ら危険な使節団の長になると言う。

その覚悟に、もはや誰も反対の声を上げることはできなかった。


「…よろしいでしょう。王自らがそこまでの覚悟をお示しになるのであれば、我らも信じてお従いするしかありますまい」


ロランが深く頭を下げたことで、議論は決着した。

議会は、カイを代表とする外交使節団をドワーフの国へ送ることを、全会一致で承認した。

カイは、指導者として、最も困難な道を自ら選んだ。

彼と、彼に同行する仲間たちの運命は、まだ誰も知らない。

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