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三柱ゲーム  作者: さらん


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35/102

◆ツクヨミ編~悪意か善意か~

家臣たちに穴から引きずり出され、俺は泥と埃にまみれていた。


「もうだめだ…帰る…。こんなダンジョン、くれてやる…」

「陛下、お気を確かに!ゴールは目前ですぞ!」

「そうだそうだ、次の合言葉も聞かねば!」


家臣たちの励ましが、今はただうるさい。

だが、王としての責任が、かろうじて俺の足を前に進ませる。

ゴーレム一号が開けた通路の先には、観音開きの立派な扉があった。


「…ゴーレム、開けろ」


俺の命令に、ゴーレムが重い扉を静かに押し開く。

その先にあったのは、温かい光に満ちた、居心地の良さそうな部屋だった。

ふかふかの絨毯、柔らかなソファ、そしてテーブルの上には湯気の立つシチューと焼きたてのパン、綺麗な水差しまである。

そして、テーブルの中央には、見慣れた立て札。


『立て続けの災難、ご苦労だったね。

ここは本当に何もない、ただの休憩室だ。

心ゆくまで休んでくれたまえ。

ま、信じるか信じないかは、キミ次第だけどね(笑)

By ドワーフ王』


「…誰が信じるか!」


俺は叫んだ。

このメッセージこそが罠だ!ドワーフ王が、なんの仕掛けもなしに、ただ優しさだけを提供してくるはずがない!


「いいか、貴様ら!絶対に気を抜くな!全てが罠だと思え!」


俺は家臣たちに厳命する。


「そのソファ!座った瞬間にスプリングで天井に打ち付けられるぞ!」

「そのシチュー!きっと最後の一口が激辛だ!俺が酢でやられたようにな!」

「そのパン!一つだけ石鹸で出来ているに違いない!」

「その水!実はただの油で、火をつけたら大爆発だ!」


俺が次々と罠の可能性を指摘している間、腹を空かせた家臣の一人が、おずおずとパンに手を伸ばした。


「陛下、試しに一つ…」

「待て、よこせ!」


俺はパンをひったくり、匂いを嗅ぎ、叩き、徹底的に調べる。

…異常はない。

俺はパンを半分にちぎり、家臣に渡した。


「よし、食え。毒見だ」

「は、はい!」


家臣は恐る恐るパンを口にしたが、次の瞬間、その顔は喜びに輝いた。


「うまいです!陛下!焼きたてです!」


それを皮切りに、家臣たちは次々とテーブルの食事に群がっていく。

シチューを食べ、ソファに座り、水を飲む。

だが、何も起こらない。ただ、心からの「うまい!」という声と、満足のため息が部屋に満ちていくだけだ。


そんな中、俺だけが部屋の中央に仁王立ちし、腕を組んで壁のシミ一つに至るまで、あらゆるものを警戒し続けていた。


家臣たちは食事と休息で体力を回復しているというのに、俺だけが精神をすり減らしていく。


…そうだ、分かったぞ。


この部屋の罠は、「何もないこと」そのものだ。

俺の疑心暗鬼を利用し、俺だけをリラックスさせない!これこそが、ドワーフ王の仕掛けた、最もたちの悪い心理トラップなのだ!


俺が一人、内なる敵と戦っていると、家臣の一人が満面の笑みでシチューの皿を差し出してきた。


「陛下もいかがです?本当に美味しいですよ!」


その善意に満ちた笑顔すら、今の俺には悪魔の囁きに聞こえた。

_| ̄|○ il||li

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