◆ツクヨミ編~受難は続くよどこまでも~
…手に入れた。ゴーレムを。
その代償として、俺の威厳は粉々に砕け散った。
肩を震わせる家臣団を一瞥し、俺は深く、深いため息をつく。だが、いつまでもこうしている訳にはいかない。
俺は気を取り直し、ゴーレムが壁を破壊して作り出した、不気味に口を開ける通路を指差した。
「よし、ゴーレム一号!お前が先導しろ!何があるか分からんからな!」
そうだ。これからはこいつを先頭に立てれば、俺が危険な目に遭うことはない。パンチも酢も、もう俺には届かないのだ。俺の性格…いや、王としての的確な判断が、ようやく報われる時が来たのだ!ハハハ!
俺はゴーレム一号の後ろに家臣たちを並ばせ、自分は最も安全な最後尾についた。
ゴーレムは音もなく、地面から数センチほど浮遊しながら滑らかに進んでいく。その姿は、実に頼もしい。
通路を進むこと数分。
前方のゴーレムが、唐突にピタリと動きを止めた。
「ん?どうした?」
俺が前の家臣に尋ねる。
「さあ…?ゴーレムが停止いたしました」
「ふむ、何か見つけたのかもしれんな。よし、俺も確認…」
俺がそう言って一歩前に足を踏み出した、その瞬間。
ズボッ!
「…へ?」
足元の床が、綺麗に俺一人分の大きさで抜け落ちた。
幸い、深さは胸のあたりまでで、怪我はない。しかし、見事にハマってしまい、身動きが取れない。
俺が穴の底で呆然としていると、ゴーレム一号がゆっくりと上半身だけを180度回転させ、俺を見下ろした。そして、あの平坦な声で告げた。
『ご主人様。この先、落とし穴の罠があります。ご注意ください』
「……。」
俺は静かに、天を仰いだ。
「言うのが遅いッ!!なぜ俺が落ちる前に言わんのだ、貴様はァァ!!」
俺の魂の叫びに、ゴーレムは少しも動じず、機械的に答える。
『私の役目は罠の探知と報告です。探知し、ご主人様が罠に陥った事実を観測したため、ご報告いたしました』
「事実を観測してからでは遅いだろうがぁぁ!」
『私は地面から浮遊しているため、この罠にはかかりません。ご安心を』
「俺が安心できるかァァァ!」
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まただ。またしても、ドワーフ王の悪趣味な仕掛けに、俺だけがピンポイントでハメられた。
穴の上から家臣たちが「おお、陛下!」「ご無事ですか!」「見事な落とし穴ですな!」などと呑気な声をかけてくる。
俺の受難は、まだ始まったばかりのようだ…。




