◆ツクヨミ編~ゴーレム1体目獲得~
「…もうやめろ。見苦しい。」
俺が家臣の浅はかな王様ごっこを止めさせ、ゴーレムと対峙する。
真の王の証明とは、一体なんなのか。俺が答えを見つけられずに固まっていると、家臣たちも固唾をのんで俺を見守っている。
その、静寂を破ったのは、唐突な金属音だった。
カシャーン!ゴツンッ!
「…いっ…た…?」
何の前触れもなく、天井から見事な放物線を描いて落下してきたのは、なぜかピカピカに磨かれた金のタライだった。そしてそれは、寸分の狂いもなく俺の頭頂部に直撃した。
家臣たちが「あ」と間抜けな声を上げる。
その衝撃が引き金だった。
脳内に、今まで靄がかかっていた記憶が一気に流れ込んでくる。
そうだ、俺は酢を飲まされ、パンチで殴られ、二度もドワーフ王の「記憶」と出会っていた。そして、アイツは言っていた。ゴーレムを起動するための、あまりにも屈辱的な合言葉を…!
『合言葉は**《私の可愛いゴーレム愛してる》**だ。』
そうだ、これだ!
そして、ゴーレムは一体だけじゃないという話も…!
俺は全ての記憶を取り戻した。頭に受けた衝撃と、思い出した合言葉の精神的衝撃で、視界がクラクラする。
「へ、陛下!お気を確かに!」
「金のタライが…!見事な軌道でしたな!」
「誰の仕業だ!」
家臣たちが騒いでいるが、もうどうでもいい。
俺はふらつきながら立ち上がり、目の前のゴーレムを、そして思い出した合言葉を交互に思い浮かべ、天を仰いだ。
…これを、言うのか。
王としての威厳を取り戻すための旅路で、一番最初にやらなければならないことが、これなのか。
俺は家臣たちの方を見た。彼らは心配そうな顔で俺を見ている。
ここでやらなければ、何も始まらない。
俺は覚悟を決めた。
「……ッ!」
涙を堪え、羞恥で赤くなる顔を隠すように俯き、そして、震える声で叫んだ。
「わ、私の……可愛いゴーレム……愛してるッ!!」
シーン、と静まり返る王の間。
家臣たちの「えっ…?」という困惑した視線が突き刺さる。
すると、今まで沈黙していたゴーレムの目が、カッと強い光を放った。
そして、その合成音声のような声が、部屋全体に響き渡る。
『第一認証、完了。我が主の命令に従います』
『継続して、第二ゴーレム認証の為の合言葉を開示します』
え、ここで言うの?
俺が青ざめるのを無視して、ゴーレムは淡々と続けた。
『《あなたなしでは生きられない、私の素敵なゴーレム様》…以上です』
家臣たちが、息を呑むのが分かった。
そして、次の瞬間には、必死に笑いを堪えて互いの顔を見合わせている。次のゴーレムを見つけた時、俺が何をさせられるのかを完全に理解した顔だ。
俺の尊厳が完全に地に落ちたその時、ゴーレムはゆっくりと部屋の壁に向き直った。そして、その巨大な拳を振りかぶり、
ドッゴォォォォン!!!
轟音と共に壁を粉砕し、その向こうに新たな暗い通路を作り出した。
…手に入れた。一体目のゴーレムを。
その代償は、あまりにも大きかった。
俺は、新しくできた通路と、その横で命令を待つゴーレム、そして肩を震わせる家臣たちを前に、ただ立ち尽くすことしかできなかった。




