◆スサノオ編~獣王ライ、スサノオへ報告~
獣王ライは、見事な獣王城の完成と、その後の悠然とした自己の統治ぶりを報告するため、召喚主である荒ぶる神スサノオの前に姿を見せていた。平原に獣人が現れてから、実に5年の月日が流れている。
「スサノオ様、ご信託の通り城に居を構え、悠然と統治を進めております。なにも問題はございません。」
ライは、堂々とした態度でスサノオに報告した。獣王城は完成し、快適な生活を送っている。民も安定し、特に大きな問題は起きていない。少なくとも、ライの認識ではそうだった。
スサノオは、ライの言葉に満足そうに頷いた。
「ふーん、それは結構だ。いい感じじゃないか。さすがだな、ライ。お前を召喚したのは間違いじゃなかったぜ。」
「はっ、ご期待に応えることができたこと、これ以上の喜びはございませぬ。」
ライは、スサノオの言葉に深々と頭を下げた。神に褒められるのは、何よりも名誉なことだった。
「それでよ、まだ姉貴たちの国は頂くほどは栄えてねーかな?」
スサノオは、突然、本題とも言える質問を投げかけた。しかし、ライの心には、その言葉が全く響かなかった。
……。
ライは、その件について全く気にしていなかった。スサノオから具体的な指示があるまでは、特に何もする必要はないと思い込んでいたのだ。
「それはそれとしてよ、もちろん頂く為の準備も順調だよな?」
スサノオは、さらに畳みかけるように尋ねた。しかし、ライは言葉に詰まってしまう。
……。
ヤバい。
姉たちの国を「頂く」ための準備など、全くの白紙状態だった。城を築き、快適に過ごすことばかりに気を取られ、肝心な目的をすっかり忘れていたのだ。
「そ、その件につきましては、こ、これからの手筈となっておりますれば、次回にはよい報告ができるかと。」
ライは、冷や汗を背中に感じながら、なんとか言葉を絞り出した。
「おお、やはりライだな。期待してるぜ、おい!!」
スサノオは、ライの言葉を疑うこともなく、豪快に笑った。
冷や汗がとまらないまま、ライは慌てて自室に戻るのだった。スサノオの期待に応えられなかった焦りと、これからどうすれば良いのかという不安が、彼の胸に重くのしかかっていた。




