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解説:星と記憶のあいだで――『最後のベーリンギア人』を読み終えて

文・千野 明宙ちの・あきおき/文明史・記憶論研究者

という事で、AIが作った、架空の解説者に書いて貰っています。

 この小説三部作『最後のベーリンギア人』は、かつて我々人類がいかにして地球を歩き、そしていかにして宇宙へと「声」を届かせたかという、静かにして壮大なる記憶の叙事詩である。

 物語は先史時代、氷の橋・ベーリンギアを渡る若き狩人タガラから始まる。彼は特別な英雄ではない。ただ、「記録しようとする意思」を持った、声なき時代の語り手である。文明も言語も十分に整っていないその時代に、「何かを誰かに伝えたい」という衝動は、果たしてどこから生まれるのか? 本作はその問いを、物語という形で静かに提示している。

 第二部では一転して、2042年の地球に舞台が移る。考古学者ノエミ博士とAIエル・ミラドール、そして“第五の信号”という時間を超えた記憶の呼び声。読者は、科学と神話が融合する「時間の門出」に立ち会うことになる。ここで本作が見せるのは、科学的思索の限界を越えて、記憶の本質が“対話”であるという真理にたどり着く構造だ。

 そして最終部、地球から宇宙へと物語は飛翔する。タガラの血を引く少年・イルカ・シェリが、自らの記憶を携えて星の図書館ミルガリオに到達する場面は、読み手の心に深い震えを与える。人間は記録によって、知識によって、あるいは思想によってのみ文明を築いたのではない。「記憶を語ろうとする意志」こそが、最も古く、最も普遍的な文明の核心なのだというメッセージが、この三部作を貫いている。

 特筆すべきは、作者が一貫して「知の傲慢」から距離を取っている点である。この物語に登場する記録者たちは、誰一人として全能ではない。彼らは不安に震えながら、失われることを恐れながら、ただ静かに、声を“未来”へ託す。そこにあるのはヒューマニズムというより、もっと根源的な「種としての祈り」とでも言うべき感情だろう。

 本作を読み終えた読者は、おそらく自らの中にも「語られざる記憶」があることに気づくはずだ。声に出さずとも、文字にせずとも、心に灯った“語りたいもの”の存在。それはもしかすると、星々が受け取るべき、次なる物語の種かもしれない。

 記録せよ、語れ、渡せ。――その繰り返しこそが、文明である。

 『最後のベーリンギア人』三部作は、まさにその原点を思い出させてくれる、記憶と観測の時空叙事詩である。


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