戦況が変化して来た
備前が言うと、
「うん、それ以外に利用法を思いついたんだ。つまり、この軽石であれば、山の上まで運べるだろう?」
「運ぶ・・?何の為に」
「爆弾だよ。これに穴を開けて、薬剤を詰める。飛翔隊も、中腹まで頭大の大きさなら、持っていけるだろう?」
「どうするって?石爆として利用するって?」
「ああ・・大きさから言えば、空から投下した方が何倍も威力が増す。翼の増産も後100枚は欲しいじゃないか。俺は、巍然族の少数の塊を攻撃したい、それで」
「巍然族の皮を確保すると言うの?」
「ああ・・そして、2つの効果を生む。俺達がとんでもない攻撃力を持っている事を見せれば、また巍然族は躊躇する。今の勢いで又集合すれば、あっと言う間に攻め込まれるぞ。それを感じたんだ」
「びっくりするよ・・この一回の試翔でそこまで発想を広げちまったのか・・閲呉は戦の申し子のようだなあ」
備前はそれが素晴らしいと賛同した。勿論燕尾も気藍にも否は無かった。
気藍は、抜燐を陣幕に加えようと言う又突然の閲呉の言葉に、困惑していた。抜燐には確かに寡黙な中に、秘密主義的な事が多々ある。それは代々の家系にもよるものだろうし、耳が聞こえないなんて言う事も閲呉が暴露した。そこで、耳打ちされた事があった。安良と今は事実上の妻となっているが衛琉との出会いである。そして、その事は閲呉は知らなかったのであるが、唯一鞭状の武具を使った巍然族でも上級の武将?と言う表現もおかしいのだが、その者は、安良が戦った赤魔人も使っていたと言う点だ。それを知っているのと言う事を気藍に伝えさせたのだ。この魔人の出現も非常におかしな話が積み重なっている。抜燐が生み出したと言うものである。その魔人の源生体は、一体どこに居たのかと言う事も謎だった。こうして、閲呉は、戦いの前にも過去のデータを照合しながらあらゆる事を考えているのである。到底、通常の者ではその発想が追い付かなかったが、天才と言うものでは無く、恐らく記憶力と共に、優れた分析力があるのだろう。
気藍は、その事を告げると抜燐の顔色はさっと変わり、意外にもこの陣幕に現れたのである。
「良く来て頂けた。感謝する」
「前にも申したが、我は既に若者の中にて活動出来るような体力も無い。それに、今あらゆる武具であるとか開発する集団を束ねている。それを承知で陣幕に入れと?」