戦況が変化して来た
「ふ・・結構、この巍鎧と翼が俺にはぴったりでなあ、少し遠くまで飛んだ。確かに、備前の遠眼で見えた場所付近には、戦闘モードの巍然族が集まっていた。飛矢もこいつらは、手先も器用なんだよな。例の鞭風の武器も使いこなせるし、ぎりぎり俺には届かなかった。その結果、射程距離は掴んだものの、これはまともに戦って勝てる見込みは無い。それでどうにか石爆の威力をこいつらに知らしめる事によって、こっちに進撃するのを今少し躊躇させたんだよ。おい、衛琉。お前は女であるが、今までそれを公にする事はして来なかった。大半の者はお前が男だと思っている筈だ。だがな?思ったんだ。お前には、この軽めの巍鎧が良い。試したが結構良かったんで、この巍然族の皮で巍鎧を作って貰え」
「そんな・・複数の事を、この試翔で?」
「考えてやった訳じゃねえよ。思いの他、この翼が良かったんでな、皮もそうだが、俺が着て具合が良かっただけの話だ。丁度良い、衛琉。お前も加われ、今回の報告を今からする」
「ええ・・はい」
衛琉はどちらかと言えば中性のようなタイプだったので、本当に男であると思っていたものも多い。しかし、閲呉は男や女、また老人であろうともそんな分け隔てをするような距離間は、まるで無かった。誰にでも同じ態度で接する事が出来る者なのだった。
閲呉は、早速こう言った。
「まずは、この巍鎧だ。とても軽く一本の飛矢を受けて見たが・・」
「受けた?飛矢を・敢えて?」
備前が驚いた。
「ああ、そうだが、備前。何でそんなに驚く。まだ報告の初っ端だぞ?」
「いえいえ、閲呉。私達も驚くわよ。巍鎧は自分の身を確かに守るもの。それは避けられない時にこそ、その結果があったと言うのは仕方が無い。でも、敢えて受けるって・・」
「はは・・成程な。ただし、報告の最初に言っただろう?飛矢の限界点を見ていた事を。つまり、威力が落ちている高さで受けて見たと言う話さ。もしもっと低い場所で、まだ飛矢の威力がある位置で受けたらどうかと言う事も、知って見たかったんだ。つまり、この巍鎧は十分にその役目を果たす。良いか?逆に考えて見ろ、俺達が放つ飛矢に対しても、巍然族には効果が薄いと言う事を意味しているんだぞ?これは、とても重要だとは思わないか」
「う・・思う」




