戦況が変化して来た
備前も大きく頷いた。天の味方であったのか、或いはこれから先に起こる災難の予兆であったのか、今も尚、上原族は圧倒的不利な状況なのは変わらない。これは攻め込む戦いでは無い。防衛戦なのだ。それに、この先にある広大な場所にはまだまだ知らない事が満載だ。閲呉の狙いは何なのか、気藍は驚く速さで2日後に試作のその翼を持って来たのである。
「もう・・出来たのか、気藍。驚くわ・・はは」
閲呉は上機嫌でその翼を繁々眺めると試着をした。閲呉の体には巍然族の軍装がしてあり、その両腕には、自分の体を覆うように翼が装着された。
「おう、軽いわ。手鳥の羽毛と変わらん。それに動かしやすそうだ。早速使翔して見るわ」
「え!何事も早いのは閲呉の方」
気藍も備前も苦笑するのであった。
そして、閲呉は一際高い場所から、その翼で飛ぶ。ひゅうーーーーーん。風切り音を残してあっと言う間に閲呉は視界から消えた。
「気藍さん、天鳥の羽毛より遥かに早そうですね」
備前が言うと、気藍も
「晩度と言う耳洞族の職人は、とても作業が早く、群を抜いている。その者に天鳥の翼に似た物を作らせんだけど、あっと言う間に出来あがったのよ。もともと天鳥の翼は相当改良を加えられていて、今では飼育している数も3,000羽になる。食にもとても貢献しているし、天鳥って言うのは卵を一日2個も産むのよね。知らなかったわ」
「いや、山の上では2日に1個でしたよ。きっと、この地での飼料が栄養価が高いからでしょう。自分も驚きです。それに体も大きくなっていますよね。山にも天鳥は居るが、こちらは1.5倍もある」
「それを食う我らの子供達も、随分成長も早く、体も大きくなっています」
「全ては、食ですね。生きるのは食。その食の為に争いが起きる。これは、永遠の種本来の定義なのです」