敵襲!
「あのね、筒はその辺に生えている穂弥の茎を乾かして作るから幾らでも材料はある。けど、その筒の中に透き通った石を入れるの。その石がある場所も知っているけど、なかなかその筒に入るような形と大きさの物がないのよ。数か月探してようやく見つけた物をその筒に入れたものがある、持って来るわ、ここに」
「驚いた・・気藍もやっぱり学者なのよねえ・・」
学者と言う言葉も初耳だった。その言葉が出る事も不思議であるが、自然に燕尾の口から出たのだった。
閲呉の言うように、分からぬ事は多い。しかし、先祖が文明と言うものを持っていたらしいと言う事は分かって来ている。耳洞族も元々そう言う文化を持っていたようなのだ。それが、このような巍然族が進出して来た経緯でもあろうが、その魔虫とは何なのか、肉眼で見えるような大きさのものでは無い・・らしいと言う事だ。
気藍は持って来た。所謂顕微鏡のようなものだと言える。穂弥の茎とは竹と考えれば分かりやすい。その中に2つの透明な気藍が言うような鉱物で言う所の石英だった。それがある場所において、研磨されたかのように真円の平ぺったい凸レンズのような形をしたものが、稀にあり、殆どはいびつな形で、その穂弥の筒に収まるようなものでは無い。探すのは大変苦労したようだが、彼らにもしそれを研磨する技術があったなら、資源的には相当数あると思っても良い。閲呉は、すぐそれを見て思ったのだった。
「ほう・・確かに目で見えなかった非常に小さなものが見える。これを抜燐師は代々受け継いで来たと言う訳か。つまり、この耳洞族の中にはひょっとしたら、これを知り得る者が居るか知れないな」
「そこまで考えた事は無かったわ」
「彼らの中には、もう言語を取り戻したものが居る。楽理の煙を長く吸うと喉をやられるようだ、だから彼らは地伝達のようなもので、互いに会話をしていたんだ。考えて見れば俺達と同じ人種なんだ。その昔は、この先の平原と交流があったと考えられる」
「それは、もう十分に分かったわ。この大地を取り戻す戦いは、未だに謎だらけ。更に広大過ぎてその先も見えないんだから」
燕尾が溜息混じりに言うと、閲呉は別の話をし出した。彼のに脳裏には色んな事が渦巻いていて、それらを正確に確かめようとしているのだ。その点で言えば、豪将、勇将はこの限られた種族1500名程ではあるが、その人材は揃っているし、彼らの頭脳も非常に高いのだ。それは、戦いの歴史の中で、魔人に食われたりする中で培い、淘汰されて来たからではないのか。山岳集団もそう言う点では非常にその能力が高い事も分かって来ているのだ。八色がその代表的な者でもあるが、閲呉は、言語を取り戻した一人の者を気藍の地伝達で呼び寄せた。耳洞族の恐らく一番の知恵者であるようだと、気藍はそう言っていたし、抜燐師もそう語っていたのが、間もなく到着した。備前と言う年齢的には閲呉達とほぼ一緒である若者だった。見るからに聡明そうで、且つ美麗でもある。どうやら、気藍がその気があるようだ。