敵襲!
「あ・・いえ、まだまだです」
「急かす事はしないが、これも重要な部分だ。巍然族が魔虫に支配され、脳まで統制されているとなると、魔虫は単なる寄生虫では無くなるからなあ」
「は・・い」
気藍もその情報を集めようとしているのだが、なかなか難しい話だった。その魔虫の正体すら全く不明なのだから。雲を掴むような話であった。日々は過ぎて行く。遅々として進まない情報収集の中で、閲呉は、衛琉と共に飛翔していた時だった。この時飛虫は彼らを襲って来る事は無かった。飛虫は肉食では無い上に、どうやら巍然族の装具が飛虫を寄せ付けない事が判明したのだ。この事は大きい発見でもあった。
閲呉は、その発見を当然報告するが、燕尾を呼んだ。燕尾は軍師として今色んな策謀を幹部達と練っている所であった。軍師の指示が戦況を左右する。その指示がどう動くのかと言う合図についての確認と、何度もそれを行う事を訓練とも言う。それをやっているのである。
「何?今色々やっている所よ、あたいも」
「分かっている。その前に確認したい事が出来た」
「至急なの?」
「ああ、とても重要な事に気づいた」
燕尾は、気藍に今やっている事を引き継ぎ監視するように告げると、閲呉と共に、自分達の住まいともなっている黒魔洞の中の幾つかの小孔に入った。
「ここまで秘密の話になるのね」
「いや、いずれは公にする。が、この話は今しなきゃならないと思った」
「ええ・・で?」
「巍然族は魔物使いだと言いながらも、自分達が魔物と言うか魔虫に支配されているんだよな?」
「まあ・・そう言う事よね、一応は」
「脳まで支配する虫・・この硬い皮を破り侵入するものかな・・」
「閲呉は、食べ物から来ていると言いたいの?それは」
「うむ、それが一番合点の行く話になる」
「抜燐殿が、耳洞族であり、この先にある平原で育ったと聞いた話を、俺はかなり受け流して聞いていたのでは無いかと思いだしたんだよ。やる事も一杯眼の前にあったからな」