敵襲!
閲呉の言葉に一同が黙った。案など無いのである。飛翔力もあるし、無数のこの飛虫が戻って来たと言う事は、どこかで食を満たしていた草原の草を食い尽くして移動して来たのである。どれほどの数が居るのだろうか。その時ぽつんと、加太がこう言った。
「じゃあ、巍然族はどうやって食を充足していたんだろうかのう」
「飛虫対策が出来ていたと言う事か?それは」
閲呉が問うと、加太は頷きながら、
「それまで巍然族は飛虫と少なくても共存していたのではないのか?支配下に置けねば、自分達の食い物にも困ろう。しかし、あれ程の数が居たのだ。確かに肥沃な大地。食うものは一杯あろうし、土蚯蚓も相当栄養価も高いしのう」
「ふむう・・つまり飛虫に食われない植物は、楽理もあるにはあるんだが」
「それでは無いのか?楽理がこの山岳には殆どそれで埋められている。故に飛虫は山岳上部に強風もそうだが、今まで侵入して来た事は無かった。その中で穂弥は一日で成長する最も繁殖力の強い植物。飛翔隊は、空からその種を撒いたらどうだ?一日で、どんなやせ土でもこれなら一気に繁殖するのでは?気藍、それにこの花には花粉が一杯ついていて、飛虫の体にそれがつけば、無限大に繁殖するのでは無かろうか・・いや、夢想の話だ。想像して見ただけなので、閲呉、そう真剣な顔で聞かないでくれや、ははは」
加太が笑ったが、閲呉は即断したのであった。
「それを今すぐ実行しよう!」
「ええっつ!」
とにかく即断即決が閲呉の真骨頂だし、加太がこれ程までに知恵者だとも思っていなかったので、燕尾も気藍も驚くのであった。佳境においても人材は居るのだ。そして自然に育っているのであろう。
この策だったが、思いの他効果があり、恐らく飛虫も著しく数を激減させていたのだろうと思われる。飛来した飛虫は思う程多くなかった事もあり、どうにか琵衛魯との均衡も保たれる事になったのである。そして巍然族は姿を見せなくなっていた。時折やはり魔物は現れる。しかし、その数も激減しているようだったが、反面地中に居る土蚯蚓他魔虫類は活発のようで、次々と地表に現れる。