第1章 勇者現る
そして、それは人にもあてはまるような気がした。確実に彼らも赤魔を食う事によって能力アップしているらしいのだ。その真由、基蛾二人もそうだった。彼らは確かに逃げ延びていたし、その途中で5体の赤魔を倒して、他の集落に持ち込んだのである。走力、膂力も飛躍的に上がっていたのだ。彼らも何となくそれは自分の体の変化に気づいていたのでは無いか・・そして、すぐ加太の飛翔被服は、軽く上部で繊維質な桧葉で縫われ、数名の加太のような手足が体に比例して長く、体重も軽く、俊敏な者を選別して訓練されるに至ると、ある程度の飛翔力は身についたのだった。何故加太のみがこの被服を持っていたのかは、やはりある限られた集団のみが、それぞれに特徴ある武具、装具を持ち断絶された点々とする集団生活の中で、横の連絡が無かったせいであろう。こうして、ようやく互いの連絡がつくようになるに連れ、赤魔、白魔との戦いは過熱性を帯びて来た。
「どりゃあああーーーっつ!」
空中高く飛び上がったのは、豪将と誰もが認める室蘭であった。この一帯では大将とも呼ばれ、かなりのリーダーシップのとれる者であったが、彼が人の最トップであるようでは無さそうだし、復帰した閏琉も相当な強者だった。
赤魔に加えて白魔も姿を現すようになると、今度は戦いの勝手が違った。白魔は、スティックのような武具を持ち、その威力は岩も砕く程で、それをまともに体に受ければひとたまりもない。既に数十名が殺られていたし、その豪将でさえも幾撃か腕、足に当たり、血が滲んでいた。数体を倒したが、簡単な敵では無かったのである。
「◎×△・・グ、ギ?クワ・・・・」
何やら言語を発していたが、分かる筈も無い。ただ、室蘭の剛力に驚いているようだ。その白魔も片腕を失っていた。室蘭の長刀がその体を切り裂いたからだ。
「どんな手段でお前達が出現しているのかの謎は解けないが、どうやらその装具にも関係があるようだな。なかなかの棒術のようなものだが、片腕では俺には勝てまい。しかし、お前は潔いのか、馬鹿なのか、逃げないんだな」
室蘭がそう言うと、やはり何かを喋っているらしい。その体でびゅんびゅん棒を振りながら向かって来た。
「やっぱり馬鹿なのか?」