敵襲!
「ん?あるから土中に棲んでいるんじゃねえのか?」
「なら、魔蜘蛛の死骸を貪り食う事も無かった訳よね」
燕尾の言う事に一理があった。
「確かに。すると、土蚯蚓が地上に出て来るかも知れない。と、なると、腹をすかせた琵衛魯はそれを食う・・と」
「かも知れないって言う話だけよ、閲呉。飛躍して考えないでね」
燕尾が手を振り否定しようとするが、確かに論理的には合っていると思った。
「もう少し落ち着くのを待ちたいが、琵衛魯が暴れ出すのを抑えるには・・」
閲呉はむしろ、餌の供給よりもこの状態を抑える事を考え出した。このように頭の切り替えが非常に早い男なのだ。ふうーーと溜息をついた後、燕尾は、
「笛で、一時的に眠らせるのはどうかしら。琵衛魯も動いていては空から火岩が降って来る。むしろ、首をすっこめて硬い甲羅の中でじっとしている方が得策よね」
「お、それだ。八色を呼べ、一時的に失神させる程度の音を出させよう」
「そんな事が・・?」
言い出した燕尾こそ、その閲呉の言葉に驚いた程だった。
これは、すぐ実行されたのだった。このように閲呉の言動は突飛に見えても、しっかり裏取りがある事だ。そして、噴火は約2週間続いた後、かなり沈静化して、既に噴煙だけは見えるものの、噴石は皆無となる中で飛翔隊が探索を開始していた。間を置かず・・これは、先手必勝の戦略も同じであり、より現在の状況を早く入手し、分析をする事だ。彼らはこうして二度の危機を奇跡的に乗り越えはしたものの、肥沃な大地は無残な姿になっており、そこには無数の魔物と、巍然族の死体が累々と転がっているのであった。その中でも閲呉は、
「使えそうな巍然族の皮は剥がせ。こちらの装具にずる」
ここでも、冷酷に聞こえる指示を出した。しかし、今度は彼らも分かっていた。この巍然族の硬い皮膜は、自分達の今度は身を守る事になるのだと。そして、この業火においてもこの皮膜は焼け残っているのだ。これは使えると思った。もはや死んでしまった個体の皮を剥ぐ程度の事等は、何とも思わなかった。魔人達を食って来た過去があるからだ。