敵襲!
閲呉は総大将になった。ここは当然であろう。この男が居なければ、あの時に全滅させられていた事をこの集団全員が知っているからだ。集団から生まれた英傑はその戦いによって、自らの天分を証明したのだ。燕尾や気藍も戦術を更に磨いた。抜燐も既に秘伝書を手渡すまでに、真からのこちら側の住民になったのである。閲呉のそれも人徳が成せた事なのだ。
もう一つ笛の改良を試みる中で、知恵者気藍からこんな報告があった。
「耳を潰す高音は、とても危険なものです。反面この音は一つの直進性を持ち、強大な武器にもなり得ます。よって、この笛を操れる者とは山岳民族の一人から選抜した八色を推挙致します」
「気藍、お前に任せる。その推挙の中には先ごろ、あちら側に居る弩爆と言う魔物の一頭を倒した事でのものがあるんだな?」
「はい」
「ふふ・・これな、八色が適任と認める。これにより、更に我々に向かう敵軍は後退した。おい、燕尾。お前もどうだ?」
今度は左右の軍師訳存在でもある燕尾に閲呉は聞いた。
「この笛は、基蛾、恵比寿、室蘭が習得しました」
「ほう・・いずれも大将格の者達だ。しかし、元々俺達の上将でもあったんだが、よくぞ承知してくれたもんだな」
「それこそ、この兵軍を束ねるのに閲呉大将が適任であると思ったからでしょう。そこは抜燐師が説き伏せてくれました」
「有難い・・で?どの魔物が手懐けたのか?」
「琵衛魯よ、これで我々には襲って来ないと思う。琵衛魯はあっちの魔物使いも扱えなかった魔物らしい。でも、そこを殆ど動かないから、あちら側には脅威にならない反面、飛虫を食うからね、こっち側には逆に益物だった訳だわ」
「はは・・それが俺達に向かって来なくなった分、頼もしい味方が出来た訳だ。でかしたぞ、二人共。おれは、3将をねぎらいに行く」
「あ・・それは大将として、わざわざ出向かない方が良い。閲呉は、どんと構えた方が良いと思う。組織とは芯がどっしりしてなくちゃ。それに褒めるのなら、衆目が集まる場所でやった方が効果的だと思うしね」
「成程・・合点」
閲呉の口癖だ。納得した時は合点と言う。燕尾と気藍は見合ったくすっと笑った。




