第1章 勇者現る
「に・・してもだ。今回いきなりこう言う事になった主因は何だろう・・いや、今までも不明な事は一杯あった。俺達が過去について何も知らない事もあるんだろうが、こうして武具はどうにか創れる・・つまり、そのような文化が少なくても過去の世界にあったと言う事だろう?抜燐」
「まあ・・その辺の事を室蘭に聞かれても、我には答えようも無いんでね」
「あ・・それはそうだったな。何か頭の奥底でいつももやもやしている部分がある。到底解決出来るものじゃないし、記録そのものも口頭伝授だけで何も残っては居ない。抜燐も頭の中だけの分析だけでやっているもんなあ」
「ま・・あ・・」
抜燐も答えようが無い質問であった。ただ、こう言った。
「一つだけ・・自分達とかなり離れている場所にやはり同族と言って良いのか、人と呼べと言われているので、集団が居るようだ。加太が一度行った事があるようなんだが、そこには相当な大将が居て、白魔と言うのが出現しているらしい。こっちは言語を使うそうなんだ」
「俺達のような?」
「うむ・・言葉は違うけど、確かに通話していて、姿には違和感があったそうなんだが、道具を使い攻撃をして来るそうさ。だが、そこの大将も相当な猛者で一歩も引かない戦いをしているそうなんだ。今の所、そちらには被害も無いらしいがね」
「タイプが違うと言うんだな?何種かの魔人が居る。いや、魔生体か・・まあ、どっちでも良いが、いずれも敵なんだな、うううむ」
「移動手段を何か考えよう。加太式の飛翔なら訓練すれば、可能かも。ただし、桧葉が利かないとなると、もう少し植生の種も植えなくては、至急にだが」
「おう、お前に任せるよ、抜燐」
抜燐は加太を呼び、近隣の集団付近に、栄奎、穂弥と言ういずれも赤魔が嫌がる匂いと言われる2種の種を渡すのであった。この2種は一粒の種があれば、2日で発芽し、3日目には倍に増える。その繰り返しで恐らく大地は肥沃で、ある程度の水分も保持しているのだろう。日数があるのかどうか、一応太陽が昇り、沈むのを一日と考えて30日目にはその辺り数百メートルはこの植生で覆われる筈だ。そして、これは人の食糧にもなる一石二丁の植物なのだ。抜燐はこう考えた。赤魔が人を食う時に、その免疫力を持ち、匂いの耐性出来たのでは無いかと。