敵襲!
燕尾も気藍も黙って聞いている。幹部達は少し離れた場所で座って聞いている。これは、影でこの抜燐に伝える事が無いように、公での会合にした訳だ。その辺から見ても閲呉はやはり相当の事を聞き出したいのであろうと、燕尾も気藍も思っていた。この黒魔洞の向こうにはとんでも無い敵が居る。それも圧倒的多数であり、退けはしたものの、その数で再び、三度押し寄せて来たら、多勢に無勢、こちらは全滅するしかない状況なのだ。誰もが分かっているその中で、これは生きるか死ぬかの論になって行くと思う。
「閲呉、お前の問いとは、ずばり我が何者かと言うのか?」
「何者・・ふ、では聞きますが、何者なんすか?俺達と種族でも違うと?」
閲呉の口元が少し緩んだ。何者って・・同じ平原に居て、自分達が生まれる前から抜燐はここに居る。同じ姿をしていて、共有語を話す。山岳集団には言語は無いし、黒魔洞向こうの人種には通じる言葉も無さそうだ。だが、大きくその姿が変わらない事は閲呉はもう知っていた。確かに人種で言えば、少し異になる点はある。
「お前達が生まれる前から確かに我は居る。この集団も言葉がばらばらだったと言う事も知るまいな」
「ええ・知らないっす。言葉が違ったんすか?へえ・・」
それには、全員が少し驚いたようだ。
「お前達が生まれる以前から、この集団の中でも諍いは多かった。つまり戦いの歴史があったと言う事だ」
「互いに闘い合っていたと言うんすね?ふむ」
「そうだ。つまり種族と言うか、山岳集団においても、まずは食う事。それが無くなれば奪い合いが起きる。今はどうにか食については、十分なものがある故に争いは次第になくなった」
「確かに・・種族同士ではね?だが、赤魔、緑魔、白魔人と戦って来た。俺が物心ついた時にはそうだった。その時にこの魔人達は居たんすか?」
「いや・・どうやら、閲呉。お前の聞きたい事の本質はそこにあるようだな」
閲呉は大きく頷いた。謎なのだ。その時こんな魔人達が居たら、自分達の祖先は、ほぼ絶滅させられていただろう。しかし、1000人の集団が残っているのだ。




