敵襲!
「これを使う時は耳に栓でもしていたのか?それに気藍、お前は平気なのか?」
気藍は言う。
「あたいは、耳が聞こえない。だから、抜燐師に笛を吹く役を任された」
「え!でも気藍」
「大丈夫、耳の代わりに音を肌で感じる。それが会話も可能にしている」
「そうだったの・」
それは、燕尾ですら知らない情報だった。閲呉がにやりとして、
「気藍、お前は砦の先に出て、その笛を吹け、俺達は耳栓をしているからよ」
「え・・はい」
砦の先に気藍を出すと言う事は、危険を前面に受けろと言う無茶な指示だった。
燕尾を制し、
「大丈夫だ。俺が全力でお前を守る、信じろ」
「はい」
こうして気藍が砦の前に出ると、何と閲呉もその隣に出た。
「あっつ!」
燕尾が驚くと同時の事だ。この男は行動が全く読めない。
気藍が笛を吹くと、何故か黒鳥は、首を振りだした。同時に飛鳥もその方向性を見失い、バタバタと地上に落ちて行く。その先に敵軍が居る。敵軍はまたも後退を余儀なくされて行く。そして、飛鳥が去って行くと、飛虫も居なくなった。地上にはやはり夥しい飛鳥の死骸が広がる様を見て、やっと閲呉は気藍の肩を叩き、笛を止めさせた。
「こ・・こんな事・・」
燕尾が奇策も奇策をこの圧倒的不利の中で、又もや覆した閲呉に驚く他は無かった。