敵襲!
「飛翔隊100名が山岳の上から石爆弾を投下します。しかし、飛鳥と、飛虫が空を覆っていますので」
「違う!誰がそんな指示をした!燕尾!しっかりしろ!ここが突破されたら、俺達は全滅なんだぞっつ!お前が指示をしろっつ!」
閲呉が怒鳴った。眼は眼下に燃える楽理にあった。
はっとなった燕尾は、
「飛翔隊に告げて、気藍。中腹から石を転がり落とすのよ。楽理の林には無数の石がある。それを落とせば、敵軍は登って来ない」
「はいっつ!」
そうなのだ。周囲の敵軍は何もこの黒魔洞だけを狙っている訳では無い。相当の軍士があらゆる作戦を練り、今回の大攻撃に踏み切っているのである。こちらの強力な火器がある事を承知の上でだ。
そして、黒魔洞周辺の敵はどうにか、退かせる事に成功はしたものの、閲呉が用意した薬湯をどう使おうと言うのか、燕尾は、
「饗場、薬湯をこっちに持って来て」
「お、おう」
砦の中で、様子を見ているしかない状況の中で、次第に砦前方にある楽理は燃え尽きようとしている中で、飛鳥や飛虫は空を真っ黒に埋めている。敵軍にそれは襲う気配も無いし、直接こちらを狙って飛翔しているのでもない事は分かったものの、どうしようも無い状態だった。そして、火が消えれば一気に敵軍は襲って来るだろう。あの音を聞いただけでも圧倒的な大軍である事は明白なのだ。いかに閲呉隊が勇猛であり、優れた戦士達が揃っていたも、打開できる策は無い。つまり、燕尾は敗北を感じていたのである。
「燕尾、俺のこれは勘だ。俺は直観でものを言う。薬湯を湿した飛矢で、おい、饗場、お前は矢の名手だ。飛鳥の中で一番先頭を飛んでいるあの巨大な黒鳥を狙え。どうやら、魔物使いがこいつを使い、飛鳥を先導しているように思える。良いか?すぐやれ、一番射程距離に近づいたタイミングでだ」
「お・・おう」