敵襲!
「もう時間も無い、すぐ火をつけて、この黒魔洞の砦下に延車丸ごと落とせ!この砦の下は楽理の林だ。足止めになるかも知れない。油もあるだけ使え!」
「おお!」
彼らは、閲呉の矢継ぎ早の指示に従った。
ぼおおおおーーっつ。真っ赤に燃えた延車が、砦下に転がり落ちて行く。黒魔洞は、平地に面しているのでは無かったのだ。少し平野部より20マムの高さにあって、その下には楽理の林が続いているのだ。
が!ビリビリ・・どどどど・・何かがその下に居たようだ。閲呉の言うように既にすぐ下に敵軍が何かの魔物の背に乗り、今にもこちら側に攻め込もうとしている所だったようだ。閲呉は、
「飛矢を放て!出来るだけだ。そして、背無理、衛琉隊にこの飛矢の補充を伝えろ!とんでも無い数と、敵軍も相当の数だぞ?すぐ傍まで来ていたようだ」
どうやら、咄嗟の閲呉の判断ですぐ近くまで敵軍が来ていて、少し退却をしたようだ。閲呉軍は青ざめた。
「危なかったんだな・・我らは。敵はそこまで」
「ああ・・一端退却はさせたが、この火が尽きたら、とんでもない大軍のように感じたぞ?あの音を聞いても」
燕尾は女性だ。幾ら有能な軍師であっても、閲呉のような神経を研ぎ澄ませた戦士では無い。この将軍が居なかったら、時計の針は押し戻されて、自分達の平野が奪われただろう。それだけの敵軍の数を見て、少し震えていた。
「閲呉・・」
燕尾が閲呉の傍による。しかし、気藍に閲呉は、
「もう伝達したか?答えは?」
この状況下で閲呉は気藍に指示を出していたようだ。