敵襲!
ずざあああーーーっつ!突如夥しい数の飛鳥が空に舞った。飛虫もその中に居る。どうやら、飛虫を追って、飛鳥がそれを食わんとしているようだ。
「ちいっつ!これはやばいっつ!」
閲呉は砦の外に出ている部隊を撤収させ、黒魔洞に逃げ込んだ。その黒魔洞正面には石垣を創り防御壁としているが、夥しい数の飛鳥であった。
「一体・どれだけ居るんだ?こっち側には飛虫は知っていたが、こんな数が居るのか・・」
燕尾が、
「これはどうしようも無い。油を塗った飛矢をこちらに近づかないように撃つしかない」
「これが、敵の作戦だとしたら、俺達は負けるぞ・・」
閲呉は呟いた。
「石爆は数も限られる。でも、飛矢と一緒に放つしか無いわ」
流石の燕尾もそれしか策は無いと言い切った。閲呉は出来るだけの飛矢を放ち、空を覆う飛虫、飛鳥に攻撃をするのだが、圧倒的なその数には大海に向かって石を投げているのと同様の話だ。その間に敵がきっと押し寄せて来ていると閲呉は感じると、
「桧葉の乾燥したものはどれくらいあるんだ?」
気藍に言うと、
「延車の10台程よ」
「それを全部使え、その中に、おい!饗場、赤魔洞の薬湯を積んで来たよな?お前」
「閲呉、何をするつもりなの?それに赤魔洞の薬湯なんて何時の間に・・」
燕尾すら知らない事だった。しかし、閲呉は色んな事を自分の中で想定していたのでは無いかと思われる。一見無駄なものだろう、薬湯の使い方も知らないし、意味も無い事をしていると誰でも思う事である。閲呉は、これは最大の危機だと思っていたのだ。その指示は素早く、恐らくこの機に乗じて敵軍が近くまで来ている事は明白だった。