第1章 勇者現る
しばらくして、調理された赤魔が容器に入れられて出て来ると、ここの集団の大将らしい、がっしりとした体格の室蘭と言う者が出て来て、抜燐と一緒に赤魔を食べながら、衛琉に対して状況を聞いている。室蘭は顎髭を胸の位置まで伸ばしている。威風堂々とした武者のような男だ。弁慶を想像すれば、大きく違わないだろう。
「そうか、5人はどうにか逃がしたものの、5人は殺された訳だな、お前の集団では」
「ああ・・なかなか見どころもあった、真由、基蛾だが、恐らく殺されてしまったのかも知れない。俺が逃がした5人の中には見かけなかったからな」
抜燐が聞く。
「でも、その時には火をつけたので、煙幕になって見えなかったんだろう?確信では無いんだな?」
「夢中だった。突然の攻撃だったからな、俺達の住まいには桧葉を沢山植えているし、その匂いで赤魔は今までも襲って来た事も無かったんだよ、不意を突かれた形だ」
「ふむ・・対応力を身に着けたと言う事かのう、もう少し調べて見よう」
抜燐が顎を擦っている。
室蘭は、こう言った。
「赤魔は確かに強敵で、我々もかなりの打撃を受けて来た。だが、真由、基蛾程の者なら簡単に殺られる事は無いさ。どこかに逃げた筈だ。赤魔も執拗には追って来ないだろ?持久力が無いんだよな?抜燐」
「ああ・・そうだ。彼らには我々のような持久力は無いようだ。確かに最初の一撃と言うか突進力と言うか、膂力は人の何倍もあるので、その爪と尾に殺られる事はあるが」
「その為に、その桧葉を編んだ装具をしているんだ、まあ、赤魔は食えるし、栄養源も豊富だ。互いの食糧となっている現状で、一進一退状態だが、抜燐がその内対処法を見つけてくれるさ。装具もこいつが開発した」
「ええ・・この赤魔を食ったら、俺もこちらに合流させて貰うんで、少し寝ますわ。疲れたんで」
「おう・・」
閏琉の無事は伝わっているようだ。そして、真由、基蛾もどうやら他の集団に合流したようだ。犠牲となったのは、3人。そして、閏琉も3体を倒したので、数字的には五分だと誰かが言った。思いっきりその者は恵比寿にしばかれたようだ。数の戦いでは無い。こちらは敢えて赤魔狩りをしていない。振り払われた火の粉を振り払っているだけなのだ。そして食い物なら他にもあるのだった。




