そして、足場が出来る
こうして、黒魔洞のあちら側には、足場となる基地的なものは構築されたのだった。もう魔蜘蛛の死骸は食い尽くされたようで、地吻は土に戻って行ったが、簡単に餌を見せれば地上に出て来る事も分かり、相当数が棲息しているようだ。これは、この土地が自分達の平原より肥沃である事の証明でもあった。
しばらく動きは無かった。これだけ派手な攻撃を行ったのだ。恐らく相当の圧力を感じただろう。そして、まさか大砲に見立てて、暗路を壁事吹き飛ばし押し出すような事を誰が思うだろうか。しかし、実際にやったのである。それを・・
だが、決して閲呉達が満足し、油断を怠っている訳では無い。この平原には無数の化け物達が存在する事は確実なのだ。飛虫もやっかいな存在だと認識しているからこそ、既にその防御法も検討しているのだ。ここまでは無傷で来た。正しく燕尾の類まれなる秘策と、閲呉のやはり類稀なる戦士としての能力が合致したのだ。この二人の存在なくして、彼らは初戦を制する事等出来なかっただろう。怯えて守護に徹するだけの戦いをせざるを得なかったのだ。
「ここで、どうするんだ?敵の備えも当然ではあるが、この平野は相当に広そうだ」
馬路が閲呉に聞く。地吻は相当に美味くて、栄養分もたっぷりあるようだ。魔蜘蛛も美味かったんだがなと閲呉は笑いながら言っている。
「おい、馬路。慌てるな、じっとしている訳では無いんだよ。これでもずっと探索中なんだぜ?」
「探索中・・ここでじっとしているのにか?」
馬路は首を傾げた。
「ふ・・入れ替わり、何人かが交代で周囲を見て回っている。お前にも順番が来るだろう、その内にな。それにだ・・この地がどの位あるのかをまず知る事も必要だとは思わないか?それをまず最初にやらないと、戦う事自体も無理だろうが」
「まあ・・それは、そうだな、うん」
「ふ・・そんなに体を持て余しているんなら、我利はもうやっているぞ?琵衛魯との距離をどの程度取れば、こいつの動きに対応出来るのかとな。この怪物は倒す必然は無い。むしろ、飛虫に対する益物なんだからな。ただ、その射程距離を掴んでおかないと、ふいにやられるかも知れない。危険性もある。その反面、飛翔力は大事だ。飛翔隊は今後も絶対必要な戦力であり、有効な手段だと思うが、どうだ?」




