世代交代の巻
そうなのだ。彼らは元々奴隷的な最下級の種族であり、この魔物使いの実験台にされたようなのだ。そこで反乱が起きたと言う事だ。既にその山岳集団は、何度もこちら側と連携出来ると説得していて、平野の方が安全なんだと言う事を伝達し、ようやく山を下りた所だった。そこで、今度は本当に医術者としての抜燐がようやくその本領を発揮し出し、彼らの失われた言葉を取り戻す事に成功しつつある。最後まで抵抗していた集団も、ようやく室蘭率いる集団に加わった。彼らは元々温厚であり、働き者でもあった。十分な食と安全を約束され、総勢500名が新に加わったと言う事だ。見た目も同じ。つまり同じ種族と言う事も分かったのである。そこから、何故か寸断された世界が更にありそうだと言う事も分かって来たのだ。
だが、眼前に居るのはまさしく敵である。彼らと相容れる事はまず無いだろうと言う事であり、怪物、魔物を生み出すとんでもない猛物使いと言う者の姿に今対していた。勿論閉鎖された空間同士であり、言語が通用する筈も無く、殺気立った眼だけがぎらぎらと光っているのであった。
「準備が出来ているか、燕尾に気藍聞いてくれ」
「はいっ!」
閲呉が何やら指示をした。戦闘がすぐ始まる事は無い。今は互いに攻め合おうとする寸前の話であった。様子を見ているのだ。どう動くかを。
気藍が、閲呉に耳打ちをすると、小さく頷く閲呉は、
「おい、我利。あっちには馬路、饗場を向かわせている。こっちはお前と気藍、惔倹が俺の傍で居ろ、まずは、眼前の琵衛魯数頭は駆逐しとかないとな?その間の進路は確保しなきゃならない。これを持て」
閲呉は中腹の岩上に待機している閲呉隊の約半分がここに居るが、細かい指示を出している。そして燕尾の後方には、衛琉隊が数十人を伴い補佐を買って出ているのだ。何が始まろうと言うのか、恐らく彼らが生まれて初めての集団で戦うこれが組織戦と言うものだろう。相手の力量は分からない。しかし、抜燐が行おうとしていたのも、こう言う猛物使いと言う方向性なのかも知れない。つまり、あちら側にも相当の知恵者が居ると言う事だ。
「よし!行けっつ!燕尾も今から開始するっつ!」
「おおおおおおっつ!」
飛翔隊が幾つもの小袋を抱えて、空から琵衛魯目掛けて飛んで行った。その時、空からすさまじい音と共に、もうもうと白煙があがった。




