第1章 勇者現る
背無理の顔が曇った。ちなみに背無理とは、中肉中背のきりっとした眉毛のどちらかと言えば、知恵者の部類に入る。無頼漢でも通っては居る猛者の一人だが、組織をまとめるのが優れているタイプの中ボス的な者だった。馬路は黒髪の単発できびきびした動きで、俊敏な万能タイプの武術者のような者だった。こちらもかなりの腕の持ち主だった。加太は、耳が大きく、顔は平ぺったい感じの者だが、こちらは諜報活動にどちらかと言えば向いているタイプで、今度の伝達にしても、離れた所に居る玲都とは良く情報交換をやっている。空を飛べるなんて、誰もが出来ない能力なのだ。しかし、自力で飛ぶ訳では無い。その服装にはパラグライダーのような羽になるものが装着されていて、自在に操れるのである。身軽だと言う事で、この者達の中では一番小柄であった。身長で言うと、160センチ位で50キロを切っている体重と思えば良い。その身軽さで、赤魔が襲って来ても、さっと空中に飛べるし、手裏剣のような武具を持っていて、それで何頭も倒して来たのだ。
ところで、その赤魔について、ある場所には研究室的な所があって、やはり知能者と呼ばれる抜燐と言う者が、赤魔の解体までやっていて体の構造を調べているらしいが、彼らはそもそもばらばらに生活をしているので、情報的には非常に少なく断片的にしか入って来ない。そして人と呼ばれる者達は敵対していないと言う事だ。その昔には一つの集団として組織があったと聞く。その組織を解体してしまい、分断したのが、ここからある程度の事が判明して来る。その抜燐と一緒の集団に居るのが、この者が大将なのかどうかは誰も分からないのだが、一応大将と呼ばれる存在らしい。こう言う話をしている所に、その閏琉が息を切らせてやって来たのだった。
「閏琉!お前・・」
その閏琉は3頭の赤魔を引きずって来ていた。
「重かったぜ・・3頭同時に引っ張るには骨が折れたわ」
「何!3頭も殺ったのか!」
抜燐が眼をくりくりとさせていた。
「閏琉、お前どうした?一人なのか?」
「ああ・・一人だ。俺達の集団の5人が赤魔に殺られた。それぞれにばらばらに逃げたが、20体の赤魔が突然襲って来た。俺は、住居に火をつけ、どうにか3頭を倒して、ここに来た」
「そうか・・今しがた馬路から地伝達が入った所だ。閏琉、お前が無事だとは伝達しておくわ。心配していたからな」
「おう・・少し休ませてくれ・・と言うか、一頭は食わせてくれや、他のこちらの者達とな」
閏琉は疲れた表情でそこへ座り込むのであった。