正体見たり!
「まあ、室蘭の腹心指名が、抜燐殿になっただけだがな、俺にとってはどうでも良い」
「しかし・・我利を呼べば、又何を言われるか。こっちの動きをべらべら喋られるっすよ」
「ふふふ。馬路の言う通りだ。だが、まあ、聞け・・良いか?」
ここでも閲呉は、ごしょごしょと耳打ちをするのだった。全てそれは燕尾が描いた策略になって行く。馬路は頷いた。他の二人は既に了解済みであった。
少し緊張しながら、我利が到着した。
「何か?」
「ああ、いやいや、馬路は地伝達が得意だったよな」
「あ・・まあ」
「すると、山岳民族にも通じる伝達が可能かどうかを聞きたいんだが」
「山岳民族に?そんなものは無い」
我利が言い切ると、
「本当に?だって、奴らはお前の地伝達を理解しているって聞いたが・・」
「なっ!そんな根も葉も無い噂話を」
「言いきれるのか?」
「勿論だ」
むっとした表情で我利が答えた。
「じゃあ、俺達は山岳民族の伝達方法を解読したんだよ。それをお前に教えてやろう」
「何だと・・解読した?」
我利が眼を剥いた。
「俺もでたらめを言う人間では無い事は知っているよな?それだけは知っているだろうな?」
閲呉は二度そう聞き直した。
「あ・ああ、お前は嘘を言う者では無い」
「じゃあ、証明してやろう。俺が今から、かんかんと音を鳴らす。この方向を良く見ろ、山岳集団がばらばらに住んでいる所だ。これは、どんな合図なのかを見ておけ」
かん、かん・・かかん、かん・・かかかか・・と閲呉がリズムをとるようにその音を出すと、その方向が大騒ぎするように、木が揺れた。