正体見たり!
何と向かったのは、黒魔出現の暗路では無かった。白魔出現の白い壁があるこちらは、岩山の向こうまでは抜けて居ない筈のこれは、つまり白い壁・・今の鉱物的組成で言えば、珪藻土の人工的な穴・・トンネルを白魔が掘って自分達の塒にしていたものだ。その土は柔らかく、あちこちに迷路のような穴が開いている。ここへは何度か探索をしたものの、余りの複雑さ故に途中で白魔が居なくなってからは放置されているのだ。閲呉がどうしようと言うのかは燕尾も分からない。しかし、異常に勘が鋭い閲呉でもある。何かが隠されていると思ったのでは無いか。
中は意外にも明るかった。灯を用意せずとも相当奥まで必要が無かったのだ。
「おかしいだろ?俺は何度かここへ入った。空から光が射しているんでも無い。入口からは相当入って来たし、あちこちに横にも穴が開いている。全部を見た訳じゃないし、ここに住もうと思えば、雨も降らないし、温度も丁度良いんだがな」
「でも、緑魔のこう言うトンネルは、飼育場になっている」
「だよな、そこで白魔、緑魔を飼育している。黒魔は実は殆ど数も居なくて、もう一体も残っていない。これだけは飼い慣らせ無かったんだよな?実の所は」
「知っていたのね?閲呉」
「ああ・・俺達がそう呼んでいるだけで種は大きく違う。つまり、白魔、緑魔は丸々太って草食の飼育種になった。ところが黒魔は雑食なんだ。そして、この白魔の巣自体がずっと放置されている。何故なのかを誰もが追求した事も無かった」
「その必然性は無かったのでは?だって、住む所も今では平地にあるしね」
「それは、そうだがな。俺には何かがあるとずっと思っていたんだよ。それに、探索する事は一杯あったしな、飛翔する事で視野も広がったし」
「そうよね、それを実践して来たわ」
燕尾も大きく頷くと、
「だからだよ、今ここに居て、謎を探りたい。お前と二人でな」
丹念に探って行く二人に、あちこちの未開の坑道のような場所が見える。
「閲呉!こっちに来て」
少し甲高い燕尾の声が聞こえた。閲呉が、正確に今燕尾が居る場所に到着した。歩いた場所はほぼ記憶しているようだ。それは燕尾もそうだが、閲呉にも相当高い画像直視能力があるようだ。故に、今までの戦いや相手の動きも熟知しているのであろう。