正体見たり!
「いえ、彼らは言語を使わない。ただ、音伝達のようなやり方をしているらしいのよ。それのパターンをある程度把握出来たと言う事よ。ただし、内緒よ、絶対に。これは抜燐師がまだ披露していない情報なんだから」
「ふ・・成程。奴らを懐柔しようって腹か。抜燐さんも読めんな、なかなか」
「それは、そこまで話を聞いただけで、連想出来る閲呉の方が身震いするわよ、うふふふ」
燕尾は笑った。確かに、同じ人種のようだ。こちらの平地の方が食べるものもあるし、安全だと言う事を納得すれば、言語も習得出来よう。彼らは恐らく怪物達に追われて今の生活環境に居る訳だ。もしかしたら、その怪物達を撃破すれば、自分達はあっち側にも暗路を使い、行き来出来るかも知れないのだ。これは、大きな可能性を秘めている事である。
そして、ようやくあちら側のかなり岩山の下になる附近に居る怪物の正体がある程度分かって来た。怪物は大きさで言えば、10マム―=10メートルもあり、体が大きな部類である閲呉の5倍強で、その首は2マム=2メートルも伸びると言う。そして、体をとても硬い表皮で包まれ、4本足だが、とても動き自体はのろく、飛虫と言う大きな昆虫系の所謂飛蝗なのだが、異常な数が棲息すると言う。その飛虫を主食にして、待ち構えているのだと言う、山の中腹までは飛虫も、その琵衛魯に殆ど食われてしまって、飛来する事は殆ど無いのだと言う。琵衛魯とは、山岳集団が名付けた名では無い、抜燐がそう名付けたのだと言う事も分かり、これだけ閲呉隊が体を張って、色んな情報を描き集めていると言うのに、何故そんな事を隠しているのかと思った。燕尾もそれには怒りの気持ちが沸き起こった。気藍は、その理由を今探っていると言う。何かが秘密の器的なものがあり、その中でぐるぐると水が渦巻いているようだ。そこに闇が果たして無いと言い切れるのだろうか・・懐疑的な空気は、ここへ来て更に大きくうねって来ていたのだった。まあ、とにもかくにも、その怪物の正体が知れた事と、無数に棲息する飛虫が琵衛魯の食を満たしているのが分かり、相当にあちら側にも肥沃な大地が広がっている事が分かって来た。そこで、閲呉は誰もが予想しなかった行動を実行しようとするのだ。何故暗路を封鎖し続けているかの謎だ。その壁は前進を止めたままなのだ。
閲呉は燕尾に耳打ちした。
「おい、本命はこっちじゃないのか?燕尾。どうもおかしい。抜燐殿の考えの全てを自分が図り知る事は難しいが、最初からこの暗路は封鎖されつつ、警戒が異常な程だった。そして、誰が考えたって、岩山を超えて、頂上には強風がびゅんびゅんと吹き荒れているし、ここに道をつけるなんて事も不可能に近い。飛翔隊すらもあんな怪物が一体何頭居るのかも知れない場所に、ほいほいと行けるかよ。おい、ついて来い。俺とお前の二人だけの作戦だ」
「え!う・・ん」
二人は夫婦でもある。誰も二人の行動を不信に思う者も居なかった。