奇妙な敵が出現した!
「馬路、何となくだけどな?山岳集団は元々俺達のように、あちら側の平地に住んでいたようなんだよ。そこへあんたも知っているように、黒・・今は蜘蛛と呼んでいるが、黒蜘蛛の怪物が巣食い、相当の者達を食ってしまった。そこで、山岳の中腹まで逃げ延び、そこで生きざるを得なかったんだよ。だから、それを追い詰める事は奴らも必死だ。だから、全滅するまで戦うだろうし、こちら側にも相当な死者も出るだろう。相当数が周囲の山に住んでいるんだからな、俺達よりひょっとして数も多いかも知れないし、四方八方から攻められて見ろ?お前は防御出来ると思うか?」
「いや・・そうなれば、兵士を分けねばならないから相当厳しいな」
「だろ?ここはな、あんたが言っていたように、これ以上天鳥や、主食である楽理を奪ったら駄目なんだ。こちらは、土地が結構肥沃らしい。だから、どんどん楽理も増えているし、黒、緑、白魔も飼育出来るようになったし、もうこちらにこいつらが向かって来る事も無い。必要なだけ食し、天鳥はどんどんと卵を産み、増えているから、今の所俺達は、この集団を養えるだけの食は有る訳だ。こいつらの食を奪う必要も無いから、補足した奴は山に戻す事にした。抜燐さんが、もう必要ないと言っていた。食う部分も余り無いし、俺達と同じ姿をしている者まで食わなくても良いだろうが?それよりな、あっち側の平地には、とんでもないまた化け物が居るようなんだ。それを山に登って来ないように、楽理を焚き、山岳集団は防御していたと言う事が分かったんだよ」
「おう・・そうだったのか、うん、分かった」
馬路も馬鹿では無い。言う事を理解したようだ。そして、閲呉の事だ。空挺部隊を増強していると言う事は、あちら側の平地を今度は探索すると言う事だろうと思った。それには、相当の持久力が必要だから、体力のある者を選抜し、少なくても山岳集団が住まない地点での休憩場所も必要だと言う事で、既に偵察も済ませて来たと言う事だ。それに煙幕のからくりは、燕尾が見せてくれた。実際には確かに山岳集団に殺されはしたが、ばりばり食うと言うのは、楽理の枝を折る音であり、こちらを驚かせる為の演出であったと言う事らしい。
馬路は納得した。なら、敢えて今山岳集団と戦う必然性は無いと言う事で、捕らえた者を戻すと言うのは、相手はどう受け取るかは知れないが、こちらの戦闘力を見せつけると同時に、戦う事を今は中断しようと言うメッセージだと。燕尾がそこまで出来ると言う事を感じ入った馬路は、閲呉隊に心服したのであった。明確に彼らは戦略を組み立てているのだ。これは、もう戦闘集団として必要なものを持っていると言う事なのだ。




