奇妙な敵が出現した!
「閲呉、お前は何時も単独行動をするが、今回何故報告もなく、こんな事を行った」
言葉が怒っているようだったが、きちんと燕尾は先に根回しをしていたのだ。それを隠密裏に隠匿しようとしていたのは抜燐なのだった。それは、もっと調査が必要だと言う目的上にあり、こそこそとしている訳では無かったが、何事も現前にその証左を示されてしまっては、この種の他に居る存在こそが、自分達にとって危険だと言う証明にもなるのではないかと閲呉はそう思うが故の行動だ。そして、それをやってのける才覚の証明もしたのである。
もはや、確かに報告も無しにこのような大胆な事をした閲呉の勇み足的なものはあっても、それが成功させたのならば、責める筋合いはなくなるのだ。
「あれ?我利から報告が無かったのかなあ、てっきり報告しているとばかり」
「なにっ!おい!我利をここへ呼べ」
我利が真っ先に報告したのは抜燐にであった。これでは誰の腹心かと言う事になろう。この集団の中では、そう言う事等は実はものすごくアバウトであって、組織としての決まり事や絶対的君主が居て、それに従うべきだと言う事などはおぼろであり、殆ど無いのだ。それを抜燐が改革しようとしているのだが、簡単にそれが出来る訳が無い。今の世界とは、要するに強い者が力を示す事が一番なのだ。そこを燕尾は読み切っていた。
こうして、この捉えた自分達と極似の人型には言語的なものは通じなかったし、到底同じ種として歩み寄りなども雰囲気的に出来そうには思えなかった。当然だ。殺し、殺される原始社会同然のこの世界では、明日は自分達も殺される運命にあるのだから。
「この人型は、どのような攻撃をして来たんだ?閲呉」
「自分達と同じような矢吹風の攻撃をしてきたっす」
「ほう・・他には?」
「煙幕を張る様子は今まで確認されています。恐らく楽理を燃やすと、もうもうと煙を発し、そこから油が採れる事と、その油を燃やすと長時間灯かりが保てます。抜燐さんが開発されているんで、そっちは聞いて貰ったら」
「む」
室蘭が抜燐を見たが、今そんな事を聞くよりも、その煙幕の中で、ばりばりと自分達の仲間を食ったと言う話だ。そこに興味があったようだ。
「ばりばりと音を立てて、自分達の仲間を数人も食ったと言うでは無いか。それは?閲呉、お前が捕らえて来たんだ。どう思う?」




