奇妙な敵が出現した!
閲呉は、今度は単独でもう夕方の時間であったが、ただ、この男が黙ってそれだけをする訳も無かった。その植物の枝はあっと言う間に刈り取ったが、
「ぐわああああっつ!」
拡声器を想像して欲しい、つまりラッパ状のものを口に当てて、その茂みに向かい大声を張り上げ、ただでさえとんでもない閲呉は大声の持ち主だ。それに石礫を複数持ち、茂みに潜んでいるらしいその対象に投げたのだ。
がさっつ・・確かに何かが動いた。
「しゃああああーーーっつ!」
大声を発した閲呉は、得意の投げ縄でその対象をあっと言う間に捕獲してのである。
そして彼ほどの剛力と飛翔力があれば、人1人を抱えて飛翔する事は容易だった。しかし、複数居るその対象は、びゅんびゅんと矢のような物を射かけて来た。負けじと閲呉は矢吹を放つと、どうにかそこから逃げ切った。
流石に大息をついて戻った閲呉に、惔倹は駆け寄った。
「ああっつ!捕らえて来たのか、敵を」
閲呉は空中でその縄を器用に丸め、ぐるぐる巻きにして自分の腹に抱えて来たのだ。重量が加わった分、飛翔速度は落ちたものの、閲呉の翼は他の者の倍近くあり、またその膂力は追随を許さぬ剛力故にそれを可能にしたのだった。
燕尾は、我利にその植物の枝を抜燐に届けるように指示すると、頑丈な檻にその人型を入れた。まさしく同じ人型であったが、言葉は全く通じなかった。
「これは、我々とは違う人型の種族のようね。確かにこの口ではばりばりと我々をその場で食う事は困難よ」
「だ・・な。しかし、同じ人型とは言えども、完全なる敵だ。こちらを攻撃しているし、かなりの飛び道具を持っていたぞ?やはり天鳥を食うんだろうな?楽理も恐らく食するんだろう」
「じゃあ、暗路に居るのは違う種ね?山岳民族だとすれば、住む場所は違って来るわ。高度な武具も持って無さそうな気がするけどね。この檻を破る事も出来そうに無いし、閲呉には勿論適う事も無いだろうし、筋力を見てもかなり弱そうよ。攻撃力が果たしてどれだけあるのやら」
そして、我利は確かに抜燐に報告を行った。すぐ、室蘭が抜燐、安良を連れて閲呉隊にやって来たのだった。